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2月
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しおりを挟む「アスパラベーコン、」
「肉食とか草食とかあるやろ、見た目肉食やのに中身草食なのをアスパラベーコン言うねんて…その逆はロールキャベツやて」
「婉曲して言って下さったんだ、はぁー…面白いですね」
前にファミレスで付け合わせのアスパラを指して「アスパラが好きか」と尋ねたのはそういうこともあるのか、愛花はなるほどと頷いた。
「おもんないよ…」
「まぁまぁ…家の外だとオラオラなんですもんね。会社ではピシッとしててカッコいいですよ?私はオラオラ系が実は…って、ギャップに萌えるタイプです。ちなみに、どんな感じでエッチしてたんですか?見せて下さいよ♡」
「アイカちゃんボンボンで酔ったん?……なん……こう、クールに…こうよ、」
和田は再び体で騎乗位を表し、精悍な顔付きでしかし気怠げに横たわって見せる。
「あー、『付き合ってやってる』感じ醸すんだ、なるほど…それもカッコいいけど…そればっかりだと激しいお姉さま方は満足されなかったんですね」
「セヤロネ」
耳まで赤くなった和田はサッと起き上がり、コーヒーでチョコレートを流し込む。
「…話が前後しますけど、その最初の彼女さんはきっと手練れだったんですかね…つい最近まで童貞だった男の子に高望みし過ぎたんでしょう…育ててあげれば良かったのにねぇ。可愛いじゃないですか、練習するチャンスが無かっただけでしょう?」
「童貞やってことは隠してた」
「うわー、見栄っ張り」
「…見た目で好かれてんもん……学生時代はその子に振られてから彼女はできんくて…就職して仕事に入れ込んでたら知らん間に20代も半ば…出世したら貫禄も付くやろ?したら雰囲気先行でモテ期なって…性欲強そうな女の子ばっか寄ってくるし…気付いたら三十路、部屋の雰囲気見て帰ったのが1人、部屋着見て帰ったのが1人、エッチまでシても俺が攻めへんから『イメージと違う』て別れたんが数人…付き合っても3ヶ月でサイナラ、大人しそうな子には恐がられる、好かれへん、告る勇気もあれへん!」
和田は顔と頭をくしくしと両手で擦っては、開き直って過去の遍歴をつらつらと暴露した。
「私は…肉食には見えませんでした?」
「アイカちゃん、最初の食事でミックスグリル奢らせる女子はただの肉食や。肉食系女子やあれへん」
「あら上手いこと言う……ちょうどいい感じでしたか」
「正直、穏やかそうやしこんなこと言うてもあっけらかんと受け入れてくれるんやないかって…いや、別に…シたいからアイカちゃん好きになったとかそっちばっかりちゃうよ、ちゃんと…考えてる」
見た目や肩書きやイメージに左右されない彼女とは居心地が良くて、それは過ごした日数や想いの深さとは違う、最初からなるべくしてなったような、不思議な感覚である。
「分かりますよ、キス以上のことはされませんし…私の魅力が薄いのか大事にされてるか怖気付いてるかのどれかでしょう」
「そない自虐的になんなよ…アイカちゃんの魅力は…その…雰囲気であるとか、顔も可愛いし……まぁ胸は可哀そ」
「このヤロウ、バラしてやる、」
愛花が大きな目を剥いて猿の玩具のように「キーッ」と息巻けば、和田は降伏ポーズで少し距離を置いた。
「すまん、ん、アイカちゃんとやったら…気が抜けて…楽しいねん、ほんまに…あの…もうこの年齢やから、遊びで付き合うてるわけちゃうのよ。エッチはシたいよ、ゆくゆくはな、でも恐いねん…」
「…豊さん…色々ね、試してみましょうよ。……あの、話してくださって嬉しいですよ。私こそ、気を遣わなくて楽で…楽しいです。ちゃんとドキドキしますから。…でも試してみないことには何とも…いつ頃シます?希望はありますか?」
「いや、決めることか?」
「こちらも体調がありますのでね、あと、あんまりロマンチックなのって好きじゃないんですよ。『キレイだ』とか言われると鳥肌立っちゃう。変な知識は入れてこないで下さいね。あと……女性でセカンドバージンっていうのは聞いたことあるんですけど…男性のはどう言うんでしょうね?」
自分との交際の先を見据えてくれていた彼の真面目さが歳の割に青くて可愛くて、愛花はニマニマと笑みを抑えきれなくなる。
「なんやえらい…上からもの言うやんか…アイカちゃん、分かってるか?」
「何をです?」
「俺、修得してまえば見た目通りオラオラになんねんで?」
「は…………あ。そんなすぐ上達しないでしょう」
「トラウマ乗り越えたらもう…ガンガン行くしな、……笑うなて」
「はい、……ふふっ♡楽しみにしてます」
「すまん、お手柔らかに頼むわ…アイカちゃん…」
その後和田は夕食後にもチョコを開けて食べ、愛花と寝るまでにチョコレート風味の口付けを数回交わしたのだった。
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