そういうギャップ、私はむしろ萌えますね。

茜琉ぴーたん

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1月

30

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 サクッとシャワーを済ませて借りた服に着替え、リビングに戻れば家主は片付けをしているところだった。

「出ました」

「うぃ、………かぃらしいね、化粧落としたりせんでええの?」

「寝る直前までこのままで。まだ、素顔を見せるには早いです」

「あそ、ほな俺も入ろ」

「ごゆっくりー」

 化粧を落としても明日の朝の本気メイク道具がない。

 常備の眉ペン一本とパウダーファンデーションでどこまで闘えるかを愛花は片付けをしながら本気で考えてみる。


 しばらくして湯上りの和田がリビングに戻ると、小綺麗になった床の上に少し埃が舞い、空気清浄機がかつてないほどに仕事をしていた。

「加湿空清なのにお水入ってなかったんで、入れましたよ。喉にも悪いし…空き缶もとりあえず袋の中です。明日、分別しましょうね、……なに笑ってるんですか」

「いや、オカンみたいやな」

「かっちーーん……いいですけど?もう二度と来ませんから」

「嘘やん、アイカちゃん…ありがとう、キレイなったわ」

 整髪料の取れた髪はふわふわと額にかかり水滴が付いていて、ハーフバックも崩れかけて素の和田の姿がそこに現れる。

 ぴっちりした髪が崩れるのは愛花の萌えポイント、悔しいかなしっかりと彼女の胸にそれは刺さって、ふにゃりと笑う和田のあどけなさも追加でクリーンヒットした。

「…さっきまでもじもじしてた野郎が…萌えを畳みかけてきやがる…」

「え、なんて?」

「なんでも……もう、寝ます?化粧落としてきますね」





 ベッドはセミダブル、隣り合って寝る分には過不足無かった。

 暗がりで愛花はひとり考える。

 「グイグイ来そうな見た目なのに期待外れで振られる」、和田はそう言ったし実際そうだと思った。

 だが、カップルになって—そうなる前にだが—すぐに家に招待し同衾どうきんする、この後何も無いにしても、これは充分に強引で女子がキュンキュンするやつなのではないだろうか。

 お相手の女性が随分と肉食系ですぐのすぐ関係を迫ったのか。

 それを断ったから「恥をかかせるな」と振られたか。

 それとも激しいセックスをしそうだと踏んでいたのにそうでもないから期待外れだったか。

 それかそれか、お洒落マンションだと思ったのにそうじゃなかったからか、提示された部屋着がダサかったからか。

 ははん、あまり考えたくは無かったが、ド変態なプレイを強要するとかか。

 愛花の答えの無い妄想が広がっていく。


「アイカちゃん、引いとる?いきなり泊まりとかキツい?」

和田は叱られたハスキー犬の様に、今更に愛花のご機嫌を窺って鼻先を彼女の耳へ擦り付ける。

「…」

過去の女性たちよ、何がそんなに不満だったのか、ここまで彼の自信を折る出来事は何なのか、是非に教えてくれまいか。

 愛花は詮ない想いを馳せたところで和田の頭を撫でた。

 「いやしかし、自分も松井の気になる点は指摘しないままだったか」とも思い、人付き合いの難しさを噛み締める。

「いえ、そこまで初心うぶでは無いので…まぁ若干引いてはいますけど、即別れるとかそういうレベルでは無いですよ。1週間はもちそうです」

「え、松井くんとええ勝負ってこと?こない好意を示してんのに⁉︎」

「今後に期待…ですかね、おやすみなさい、明日はゴミ捨てしますからね、むにゃ…」

「ん……おやすみ…」
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