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2月
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しおりを挟む「豆腐、野菜、漬物、豆類は特に食うたね…給食と外食で動物性タンパク質を摂んねん、初めてのフライドチキンの味は未だに忘れられへん」
「それでもこれだけ背が伸びたのは良かったですね…遺伝でしょうか」
「そうかもな、親父もデカいから…アイカちゃんは?聞いてへんかったけど普通の仏教?」
あまり尋ねる機会の無いデリケートな質問だが、和田はそれほど抵抗なく愛花へ聞いた。
「んー…あー…どうなんだろ…」
「え、珍しいやつ?新興宗教?」
「いえ、仏教じゃなくて、神道なんですよ」
「しんとう、」
信仰対象は八百万の神、自然や祖先を尊び祀る、日本に古くから根付いている宗教であり文化である。
「うちの実家の集落はみんな神道で…仏壇じゃなくてでっかい神棚がこう…置いてあるんです、だから一般的なお葬式とかも作法がちょっと違って…まぁ生まれがそうってだけで、なんら信仰心が深いとかそんなことはないです」
「はぁ…初詣はそういうこと?」
「違いますよ、たまたまです。普通に生きてて実家の宗教とか気にすること無いですもん」
彼女は否定するが先月に二人で行った神社での初詣、鳥居のくぐり方や参道の歩き方、愛花の所作が慣れていて美しいと和田は感心していたのだ。
「へぇ…俺とおってタブーとかない?大丈夫?」
「ありませんよ…敵対してるわけじゃないし…私はゴリゴリに崇拝してるわけじゃないんです。あくまで習慣とか…それくらいです」
「なるほど…いただきますとごちそうさまもキレイにするもんな、そういうことか」
「恥ずかしいな…豊さんだって、何かの度に合掌したりしないでしょう?その程度です……あ、そこ、その建物です」
・
山の裾野に建つ和風建築、豆腐専門店に着いた二人は手頃なコースを頼んでその素朴で優しい味わいに舌鼓を打った。
「美味いな…豆腐ひとつでこんな…感動するわ…」
「おからも湯葉も美味しいですね…大豆って偉大」
「ほんまよ…俺、ちゃんと自炊しよかな」
和田の食生活は殆どが買った弁当で、家事といえば米を炊くくらい、飲み物はペットボトルで賄っている。
「お弁当に豆腐入れて来るんですか?ウケる」
「夜とかよ、ダイエットにもなるかな…肌はキレイになるかも」
「あー、いいですね…ネギに天かす振って。いい醤油で、」
「ええな、明日の夜からしてみよ…うん、美味い」
「ふふ」
新たな展望を見出した和田は爽やかに笑い、愛花はこの場を紹介できたことを実に誇らしく思っていた。
食後、会計口の隣の土産コーナーで和田は豆腐に特化した醤油を買い、愛花の分まできちんと支払ってくれた。
「ご馳走様でした…なんだか悪いです」
「ええよ、美味いとこ教えてくれたから…ありがとう」
「そりゃファミレスとはわけが違いますよ…値段も…まぁありがとうございます」
普段奢ってくれる金額の3倍はかかったが、よくよく考えればいつものファミレスが安すぎるのだ。
ほくほくと二人は街へ戻り、近くのスーパーで良さげな豆腐を買って家まで戻った。
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