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1月

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「はいはい、ファミレスだと満足されない方々だったんですね、ハイソで宜しいこと」

所詮私はファミレスで喜ぶ女、元よりデートでもないのだからそれで結構だと愛花は思うのである。

「こないな…仕事着で会うようなこともあれへんしな、」

「そうですねぇ~、あー、コーヒーのシミだ、シミ抜きしなきゃー」

愛花は自身のワイシャツの袖をつまんで当て付けのように棒読みで答えた。

「…俺に対して『かわいい』なんて言わへんし」

「怖い顔して大きな体丸めて機械をポチポチしてるのが可愛かったんですよね、はい失礼失礼、」

「クリスマスかて、あんな質素なんは初めてや」

「あれは勉強会だったでしょうよ、」

意気揚々と「女性と過ごしたクリスマス」だと喜んでいたくせによくそんな事が言えるもんだと愛花は呆れる。

「なんやねん…あの匂わせ、『40になったら私がおる』やら『男として見ていいか』やら…ならそっちが言うてくるんが筋やろ!」

「都合よく改変しないで下さい。『40になっても独り身だったら私が立候補する』って言ったんですよ。私がその時に売り切れてたらどうするんですか?可能性無くはないですよ」

「40、40て言いなや…まだ37や…………美味い」

「大体、所長だって、やたら褒めたり弱み見せたり…セクハラが過ぎますよ」

「吹竹さん、セクハラの意味分かってんのか?俺は嫌がらせなんかしたつもりあれへん」

「する側はそう主張するもんですよ」

「……ふん」


 鶏の照り焼きをちまちまと頬張る愛花を眺めて和田はコーラの烏龍茶割を一気、いよいよ話を詰める気になった。

「そういうのが可愛い言うてんねん」

「は?」

「もぐもぐもぐもぐ…小動物みたいで…かいらしい。この仕事ならではやけど話も上手い。俺はプライベートでは聞き役の方やけど…あんな身の上話を人に話したん初めてや」

 それは昨年の忘年会の帰り…酔った和田が愛花へ吐露した守谷への嫉妬の話、コンプレックスの話、恋愛の話。

「あれは酔ってらしたから。私が特別という訳じゃないですよ、あの」

「出逢って2週間で、あないな話する相手が他に沢山いんの?吹竹さん」

和田は行儀悪くフォークをピッと彼女へ向けて、いつにも増して偏屈に眉を歪ませた。

「いや、いませんけど」

「どう言うてええか分からへん。アラフォーになってもや。女に困った事はあれへんのに…自分から言うた事なんかあれへんねん」

「あらあら…」


 ポカンと口を開いた後にニマッと笑い、愛花は残りのハンバーグをライスの上にポンと置いてひと口、すぐさま茶色のそれを頬張る。

 薄目で手元を見ながらニマニマと、鉄板の上のコーンを箸で転がして愛花も黙る。

 ここまで言えば彼女が乗ると踏んでいた和田は「ぐぬぬ」と不機嫌そうな顔をして、無言で食事を平らげてナイフとフォークを揃えて置いた。

「トイレ行ってくる…ゆっくり食べて」

「はーい」

愛花は和田が席を立ったら少しスピードアップして肉を腹へ片付ける。

 真摯に向き合わねば失礼だろうし、粘っても話が進みそうにないのだ。

「……美味しい」
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