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12月
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しおりを挟む「結構食うたね…もう入らへんわ…」
「そうですね、ゆっくりだから満腹感が高まってます」
ポテトとサラダに始まり前菜も頼み、メインの肉料理を食べ切る頃にはとてもじゃないがデザートなど腹に入りそうに無かった。
「少し時間を開けましょう、席も空いてますし…結局そんなに混みませんでしたね」
「せやな…おおかた…いや、なんでも」
言いかけたのは「カップルは今頃みんなホテルだろう」、うっかり口が滑りかけたが和田はなんとか持ち堪えた。
ところが
「みんな、今頃お家かホテルでしっぽりしてますよぉ~」
愛花はあっけらかんとそう言い放ち、和田の気遣いを無駄にした上に彼の持つ「女性」像をガラガラと砕いていく。
「うん、まぁせやろけどな、うん……言わんとこか…」
「はーい…」
彼女は男性経験はそれなり、自分の事となれば多少の照れはあるが人の事であれば気にならない…そんなにお子様ではないのだ。
「ぼちぼち巻末やし…頑張ろか…」
仕切り直した和田がコーラを飲む、グラスが少し回転する…その動きを目で追う愛花に、彼が何か気付いて声をかける。
「吹竹さん…目ぇ大きいな。メガネ外さへんの?」
自身の大きい目をぐりんと向け、愛花の顔を下から覗き込んだ。
「…大きくても視力が弱いんですもん。コンタクトは怖いし、外せませんよ」
「へぇ……ちょっとメガネとってみてく」
「嫌ですよ」
愛花は食い気味に断った。
「なんで?」
「いや…外したって格段に美人が現れるわけじゃありませんから。期待されても困るし、メガネ込みで私なので」
胸に右手を当て、芝居がかった口調で答える。
「ふーん…今のままでもべっぴんさんやけど…すまん」
「所長はサラッとキザな事を仰いますね、無意識ですか?」
ちょっとしたノリをいなされた愛花は恥ずかし紛れに和田を攻撃し出す。
そして咳払いをして彼のグラスを取り、
「今更ですけどこれ、最初に私が飲んでたやつです」
と自分の方へ引き寄せた。
「へ?あ、すまん、わざとちゃうよ、あ…新しいの持って来るわ……何がええかな」
和田はいつかの様に地黒の肌をそれなりに紅潮させて、ドリンクバーへ駆け出して行った。
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