そういうギャップ、私はむしろ萌えますね。

茜琉ぴーたん

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12月

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 ナビ通りに走り、愛花は和田のアパートの駐車場へ入る。

「ありがとうね、吹竹さん…ほんまに君は……話し易うて…ベラベラ喋ってもうて困るわ…」

酔いが醒めたのだろうか、和田は恥ずかしそうに顔を摩った。

「いえいえ……あの、気になってたんですけど、守谷フロア長のこと本当に嫌いなんですか?」

アイカはなかなかに気になっていた、二言目には守谷守谷と口にする和田、そこに何かあるのだろうか、と。

「嫌い……いや…」

尋ねられた和田は顎から額へ大きな手を滑らして目元ごと覆う。

 そして

「嫉妬…やねんな。はっきり言うとな。同期やけど…大卒で、先に役職が付いて、関東の本社近くに転勤もして……可愛い嫁ももろて一緒に働いて……羨ましいねんな…結局…」

と明かしヘッドレストへコツンと後ろ頭を付け、酒臭い息を鼻から吐き出した。

「学歴はまぁ…専門を選んだんは自分の選択やけど…同じ仕事しても大卒は基本給から違うしな、んー…妬みやな、うん」

「そうですか…あまりに守谷フロア長に固執されるので、ただならぬ仲かと思ってしまいました」

「は……吹竹さん、マジで言うてんの……?」

和田は汚物を見るような目で愛花を睨み、しかしそこそこ慣れた彼女は動じなかった。

「いえ、まぁ冗談ですけど…意識しすぎだからそういうのもあるのかと」

「ねぇわ………ほんま、内緒よ、……嫁さんな、守谷の…バイトで入った時に俺も本店の法人で勤務やってな……可愛い思ててんな…」


 それはもう10年も昔の話である。

 守谷が近隣店にいた頃、アルバイトでレジに入った未来みらいと和田は本店で出会っていた。

 部門が違うので接点はほぼ無かったが、高校生バイトなのに昼間に入っているのが不思議で自然と目に付くようになっていたのだ。
 
「わぁお!」

「いや、ほんまに思うた…そんだけよ。俺はその後すぐ山陰に行って…同期会で守谷の様子聞いたら嫁貰うたって…相手があの時のバイトの子やって驚いて…何もかんも手に入れて羨ましいなぁて……そんだけよ」


 それはもしかしたら一目惚れだったのかもしれない。

 しかし今更どうなる事でもないし告白したところで報われていなかった想いである。

 未来がアルバイトを始めた頃には既に彼女は守谷家に住み、ゆくゆくは結婚する意思がある事を守谷から伝えられていたのだから。


「恋にもなってへん、気になってただけよ、それを持って行ったんが守谷やっちゅうのが腹立つねんな、俺が持ってへん物を全部…持っとるわ、あぁ、卑屈になってもうて…ごめんな、送ってくれてありがとうね、お疲れ様」

和田は喋り過ぎたと話を切り上げて足元の紙袋を拾う。

「いえいえ…」

「また……何か奢らせて。ほいじゃあね」


 まだ少しフラフラとした足取りで和田はアパートの1階の部屋へ入って行く。

 明日は休み、会社に置いて帰った車はタクシーか何かで取りに行くつもりなのだろう。

「なんか…いろいろ聞いちゃったな…」

 愛花は最後の話は自分の心だけに留め、自宅へと帰って行った。
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