そういうギャップ、私はむしろ萌えますね。

12月

7

　12月中旬。

　和田が転勤して来て２週間、ぶっきらぼうで強面こわもての彼も次第に本店メンバーに馴染みだしていた。

　犬猿の仲の守谷などは顔を合わせる度に火花を散らしてはいるが他の管理職とも連携が取れてきている。

　しかし中でも一番の交流を持っているのは部下の愛花であった。


　和田はレジのフロア長も兼ねてはいるが実務は行わずに法人業務と並行して監督する立場、愛花もメインレジとカフェを行き来していて接点は余り無い。

　本来ならばそれほど親しく話をするような関係性でもないのだが、早い段階で食事を共にしたのが大きかったのか、和田はなかなかに愛花へ心を開いていた。

　レジのヘルプで、カフェの客として、休憩時間、すれ違う時、だんだんとくだけた雰囲気で二人は接するようになっていた。

　愛花の話上手で明るい性格が新天地で心細かった和田の緊張を解した、言葉にすればそれだけのことだが、少なくとも彼は非常に救われる思いがしていたのだ。


「吹竹さん、今夜来るん？」

「もちろん、行きますよ！運転あるので呑みませんけど！」

　今夜は忘年会兼歓迎会、事務所で休憩していた愛花に主役の和田が声を掛けた。

「所長はお呑みになるでしょう？乗り合わせて行きますか？」

「んー…お願いできる…？」

「大丈夫ですよ、じゃあ、たくさん呑んで下さいね！」
　
「せやね、」

　愛花の朗ほがらかな受け答えは、和田の日々の癒しとなっている。

　そしてそれは愛花も同様で、和田のキツそうな見た目と繊細な性格のギャップが堪らなくツボにハマっていた。


　二人は連絡先を交換して以来特に何もアクションは無いのだが、「なんとなくいい雰囲気」になりそうでならない、それくらいの関係にはなりつつあった。

　もっともまだ出逢って半月だから急速な発展がある方がおかしいのだが、二人の関係性はむしろ時間の割には深まっている方だった。