俺はこの顔で愛を釣る

茜琉ぴーたん

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24・悠一side・象のモニュメント

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 腹に物が溜まる、胃から染みて血管へ入る、不足していた栄養が身体中に行き渡るようで、今宵こよいの食事は人生イチのご馳走だったかもしれない。

 独りでは進まない食事も彼女と居ればなんだって食える、焼け焦げたクリームソースをスプーンでこそぎ落としてがっつくほどには俺は元気になっていた。


「ごちそうさま…はぁ…幸福や」

「ふふ…大袈裟な」

「大袈裟とちゃうよ……ほんまに…香澄かすみちゃんからの手紙があってから俺おかしゅうなってん。夜も寝られへん、メシも食われへん……せや、カバンのキーホルダーも外してたやろ、あれも気になっててん」

「監視の目があるならネヤガワラファンと思われる格好は避けた方が賢明と判断しまして…すみません…言葉が足りなかったです」

 済まなそうに卵にスプーンを入れて口へ運ぶ、その度に「新発見!」とばかりに美味さに眉を上げ下げする仕草が可愛らしい。

 何枚も何回も職場で手紙のやり取りをするのは確かに気が引けるので気持ちは分かる、しかしもう少し推敲すいこうして清書した方が良かっただろうと俺は辛い日々を思い出してはスープをぐびと空にした。

「せやな…ひと言、『好きです』とか書いてたらちゃうかったのにな」

「…これからはそうします」

「うん…できる範囲で…会社の営業用のアドレスから返信するから…便りは欲しい」

「はい…パソコンからはどうですか?」

「いや、家に押し入られたら余計なもんも全部漏れてまう。その都度ログアウトすりゃええやろうけど…そこに割く注意力が足りんくてな」

「そっか…ふふっ、なんか…変なの」

「なにが」

「だって、私たちってデートもこれ併せて4回とかですよ?なのに長年連れ添った運命の相手みたいな…それこそ大袈裟な感じしません?」

それは決して嘲笑ちょうしょうとかではなくて自虐を含んだような笑みで、彼女のこの顔は少しばかり年相応に大人の表情に見える。


 時間ではなく深さなのだ、しかして俺も彼女と長く一緒に居られるかなんて確信は無い。

 フィクションのラブストーリーはそこだけを切り取っているのであって、元カレや元カノとの恋愛は添え物扱いである。

 俺たちの今のこの恋がメインストーリーとは限らない、もしかしたら「あんな恋もしたね」なんて後々思い出のひとコマ程度しか回想されない恋かもしれない。

 だからといって誰が運命の相手かなんて現時点で分からないのだから今この時に燃えるしかない…なんて熱い説明はできそうにない。


「んー…ほら、思い出補正、逢えない時間が愛育てる的なことと違う?」

「あー、良いように補完しちゃってるんだ」

「……思い出して…みる?」

 口付けすれば分かったことがひとつ、それは彼女のオムライスと俺のドリアのクリームソースが同じ味だということだ。

「んッ……あの、口に食べ物が入ってる時にキス、ン~、ん…」

「ぷは…ここのクリームソース、美味いなぁ、なぁ?香澄チャン」

「は、んム……ん……ぷへ…悠一ゆういちさん…もうこれ以上は…」

「悠ちゃんやろ、ちゃんと呼んで」


 決めたっきりあまり呼んでくれない渾名あだなを催促すれば彼女の口はむずむずと震えて波打って、

「悠ちゃん……場所、変えましょ、」

と改めてステンレスのスプーンを握り直す。





 しっかり食べ切って、焦った割に食後のコーヒーも飲みお腹を落ち着かせて…俺は前回と同じ象のモニュメントが輝くホテルへとハンドルを切る。

 どうやって部屋を選んだかは憶えていない、カーペット敷の廊下を香澄ちゃんの手を引いて速足に歩いて、部屋に入れば靴を履いたままベッドへ彼女を押し倒した。


「痛ぁ…悠ちゃん…」

「ごめん、は…おっぱい、おっぱい見して、」

「…おっぱい星人なんですか?」

「なんでもええねん、ん……俺、オーラルセックス好きなんよ」

「はぁ」

「後でま◯こも舐める…ん…可愛い乳首♡」


 性癖は人それぞれだ、辞書的なそれもそうだし性的なそれも同様である。

 俺は食に特別関心があるという訳ではないしゲテモノ食いでもないけれど、ことセックスにおいては口や舌・喉で味わいたい欲求が非常に高い。

 マウストゥーマウスのキスに始まり乳房・脇、女性器はもちろんのこと足の指も大好物である。

 嫌がって暴れるのを制するも良し、諦めて受け入れる姿を見るも良し、ただ感じ出して頭を押し付けられるのは好きではないので相手にもよる…まぁ俺より立場の弱い子に対しての行為なので要はSっぽい責めが好きということだ。

「あの、本当…幼女に手ぇ出してないですよね?」

「大丈夫や…んッ♡童顔成人女性が好みいうだけ…ん…次、脱がすよ」

「ひぃ」

「んー…1日働いた後のパンツはええ匂いすんね」

「変態」

 そうだ俺は変態だよ、手先指先性器では飽き足らず口で女を味わいたいんだ、

ねぶるで」

と握った足首に力を込めれば彼女は大人しくなって喰われる準備をする。

 むあと広がる女の匂いは今日もかぐわしくて、それが好いた香澄ちゃんだからこそ余計に奮い立つ。

 ちなみにだが俺はあのストーカー女とも当然セックスはしているしクンニリングスもさせてもらっている、しかしながら今の状況を考えると舌根から外して水道で洗いたいくらいには嫌な思い出となっていた。


「ひっ…はァ……あー……ぅわ、あ、」

「ん…開通してるからな…指もな、んッ♡」

「あ、あ…ぁア⁉︎」

「ここ、ええ感じするやろ、潮噴いてええで♡」

 曲げた指は彼女のGスポットを押して尿意にも似た快感を連れて来る、併せてクリトリスも舐める、はらがきゅうと指を締め付けてそのポテンシャルに俺の股間もうずき出す。

「は…なぁ、香澄ちゃん、俺さ、エッチ下手やねん、ごめんな」

「へ、あ、そう、なんで、すかぁ♡あ、」

「自分本位なプレイしかして来ぇへんかって…ん、しやから…改善点がありゃあ言うて、な、」

「は、イっ…あ、ぅあ、それやらァ♡」


 クリトリスの外イキとGスポットでの中イキ、どちらが先かな…蹴られるのもいとわず集中して責めること5分ほどか、

「っ……悠、ッい、っちゃう、イっちゃ、待って、まッ…やぁあ♡♡♡」

と腰を浮かせた彼女から噴射されたさらさらの液体は俺の手とあごを濡らした。
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