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16・悠一side・すっぴんで帰ったら
しおりを挟む生臭い、塩っぱい、小便臭い、けれどそれが良い。
むせ返る香澄ちゃんの匂いに包まれて前人未到どころか初開帳の女陰へ、舌先でこちょこちょと擽れば彼女はベッドの上を船を漕ぐように逃げて行く。
「んッ…逃げんな、こら」
「だって、そ、そんなトコ、舐めて…」
「気持ちええやろ、解さな入らへんぞ」
「こわいぃ」
まぁそうだろう怖いだろう、深く知りもしない男に股を舐められるなんて経験は俺も無いしその恐怖は分からんでもない。
ただ俺は深く知らない女にモノをしゃぶられた経験はあるので、その恐怖と気まずさを超える快感がそこにあることは理解している。
あれはマッチングアプリで出会った中でも一番ヤバい奴だった、少しずつ距離を詰めたのは評価できるが「ナリくん、ナリくん、」と呟きながらフェラチオする姿はもはやお化けか妖怪の様だった。
あれで近付いて来た女は結局3人とも薄らどころかがっつりネヤガワラファンで、それを分かりつつ身分を隠し御相伴に預かった俺の神経もどうかしているのだろう。
「悠一さん、あの、舐めるんは嫌や、」
目に涙を浮かべて俺の舌を拒否する彼女をあいつらと同列に扱ったのは可哀想だったな、なんせこの子は未だに俺を介してナリの情報を聞き出したり阿漕な真似をしてこない。
誠実に向き合って交際できそう、でも2度目のデートでホテルに行くのは尚早だったかな、まぁ好みなんだから仕方ないか。
「んッ…ほな指でこちょこちょすんで?頑張れる?」
「が、んば…れんかも…」
「しやからペロペロさしてぇよ…ん、んム、」
彼女は俺が好みで俺も彼女が好みで、気分が盛り上がってしまう理由はそれだけで充分で…俺にしては珍しく動機付けを厳しく何度もしては自身を手で扱いた。
「はァ…あっ…フぅッ…」
「……ん、」
「あかん、ゆういぢざ、あ、嫌やァ、なん、嫌、」
開かせた脚はぐいぐい閉じてきて太ももは俺の頬を潰す、これはご褒美だな…鼻から笑みを溢せば彼女はびくんと疼き腰が浮く。
こんなに簡単に達するのか、暴れようとする脚をしっかり引き付けて香澄ちゃんが漏らす吐息に耳を傾けて、舌全体で入り口を覆うように舐れば「はう」と今日イチの喘ぎ声が聞こえた。
「ッあ、あァっ…や、ア、」
「……フ…香澄ちゃん、やらしぃな」
「嫌やぁ、……ッ…ひぐ…」
「泣かんとって、萎えてまう」
「はァ…ゆーいち、さんッ…」
涙でぐしゃぐしゃの目の下には化粧がじんわり滲んで黒く汚れていて、迷子になった子供のようでそれはそれは可愛らしい。
「悠くんとか…悠ちゃんでもええで、」
「……悠、ちゃん、」
「ん……香澄ちゃん、顔洗うたら?崩れてるわ」
「え、あー…うーん…」
化粧を落とせばもっと童顔になるのだろう、俺はそこを期待している訳だが彼女はいまいち乗り気ではなかった。
「化粧道具、もってへんの?」
「うん…デートの後すっぴんで帰ったら…モロにそういうことや思われるやん…」
こっそり自室へ籠るとかできないのか、帰宅して家族と顔を合わせる前提なのは葛城家の住人の仲の良さを表しているということなのだろう。
しかし普通は『俺に素顔を見せる』のを躊躇うべきではないのだろうか…よほど自信があるのか気を許してくれているのか、どちらだろうか。
「ほな、夕飯は要らんて連絡しとき、んで夜帰ったら即風呂入って素顔になったら?」
「うーん…でも化粧してへんと服とも合わへんし…」
「夕飯はテイクアウトで何か食おか、それともルームサービス…取ろか」
「……そんなに…長く居れへん…」
息が整って体勢が整って、このシチュエーションにおける恥ずかしさを払拭するようにお喋りになってしまう、香澄ちゃんはベタついた鼻の頭を指で擦り「はぁ」とため息をついた。
「…メイク落とし、探してみます」
「ん…待ってる」
「嘘でも…可愛いて言うて下さい」
「任しといて」
洗面所へ立った彼女はアメニティをガサゴソ探ってクレンジングを見つけ、タオルを用意する。
カチャカチャ、パシャパシャ、水の音が止まったら俺はベッドの上に胡座をかいてリアクションの準備に入った。
さてどんなあどけない顔になっているのだろうか、わくわくして待っていると頼んでいないバスローブを羽織った彼女がおずおずとベッドルームへ戻ってくる。
「……あの…こんなん、です、」
「…かわいい」
「お、お世辞とか結構です、」
「可愛いわ、小学生みたい」
体の凹凸を隠すと顔の幼さが強調される…薄くなった眉、つるつるの肌、どんぐり眼は変わらないが彩りは消えて羽のようだったまつ毛は幾分か軽くなったようだ。
「しょっ…小学生は言い過ぎちゃう?」
「いや、若見え…おいでぇ、おにいさんに抱かして」
そう言って手を広げればゲンナリした面持ちで口で不満を表す、しかし彼女はトコトコ小股で歩み寄り
「優しゅうして…ください」
と俺の腕へ飛び込んでくれる。
「ふふっ…いや、あかんなぁ、ほんまに変質者みたいや」
「体はまぁまぁやねんけど…顔のパーツはなんでか大人っぽく見えへん」
「…何が違うんやろな、ほら、老け顔て言われるタイプの人もいてるやん」
「イモっぽいんかなぁ」
会話の空白は作らず、何故だろうまるで昔から見知っていたかのように、香澄ちゃんが案外順応するものだから俺の方が緊張して…持参したコンドームの封を切った。
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