俺はこの顔で愛を釣る

茜琉ぴーたん

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9・香澄side・擦っても落ちないボロネーゼ

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 カルボナーラの味ってあんまり好きではなくて、成田なりたさんの舌に絡んだパルメザンチーズの欠片かけらがこっちの口内に乗り込んで来たのは少し気分が悪かった。


「んッ……ふゥ…」

香澄かすみチャン…なぁ、ナリくんとエッチ、しようや、」

「ム…んっ…ンむ…いや、むン…」

 本性を表した成田さんは私を壁に押しつけて胸にまで手を入れて来て、ここで私が大声を出そうものなら捕まるというのに一向に退かず。

 それどころか慣れた手つきでブラジャーの奥まで侵入して乳首をひねりあげる。

「きゃん」

「ふは…なんやその反応…可愛い…な、香澄チャン、ええやろ」

「お断りや、ねじらんとって…」

「推しとエッチ、シたいやろ、自慢になるで?」

「しません、自慢にもなりません、第一成田さんはナリとはちゃう、」

好みのタイプと付き合いたいタイプは違うんです、そう言えば彼の身内をけなすことになって気分を害するだろうか。

 我ながら人の良い私はこれを事件にしたくなくて穏便に済まそうと彼の手を押さえた。

 何を隠そう彼氏いない歴=年齢の私において妙齢の男性に乳首を摘まれるなんて経験は初めてだったのだが…案外冷静に対応できるものだなぁとこじらせた自分を少し頼もしく感じる。


「おんなじやん…よぉ見て?ナリの顔やろ…ちんちんもおんなじやで?双子やねんもん…」

「お、推しとそんななりたいと思うてませんからっ、シたいとか思いませんっ」

「あー、そうなん?つまらんの」

 成田さんは残念そうにそう呟いて手を引き抜いて、空中で指を動かし私の乳頭の径などを確認しているらしかった。

 そして

「まぁでも、シたなったら言うてな…あ、あと、会社には言わんとってよ…個人的な事やからね」

と、また推しと同じ顔で保身に走る。

「ほなせんかったらええのに」

「タイプやねんもん」

「んなこと言われたん初めてや……慣れてはるんですね」

「そうでもあれへんよ…アホなファンやったら遊んだろ思うただけで…」

「こんなこと、他にもしてはるんですか?引くわ、」

もう遠慮などしない、ボロネーゼをちゅるちゅるすすって横目で睨む。

 食べ終えた彼はテーブルに肘をついてニコニコ笑っていた。

「身元明かしたんは初めてよ。マッチングアプリとか、この顔のアイコンと『似てる芸能人・ナリ』に釣られてファンが来んのよ。同意の上やで?双方に利があんねんもん…ファンはナリに抱かれた気ぃになって嬉しいやろ?俺もスッキリして嬉しいやん、」

「引くー」

「セフレ持ってる男なんか世の中ごまんとおるやろ、珍しい話ちゃうけどね」

「そんなんで良いって思ってる男に抱かれるの嫌ですよ。ちゃんと…成田さんやないとダメって女の人、探した方が幸せになれますよ」

 だいたいそんな面倒そうな女性と関わっておいてすぐに縁が切れる訳がない。

 グッズに釣られた私が言えることではないけれど…熱狂的なファンならば推しと同じ顔でセックスまでしてくれる人とは繋がっておきたいはずだろうから。

 きっと現在進行形でセフレを何人も囲って都合よく遊んでいるのだろうと思えば、ますます成田さんの魅力が地に落ちていく。

「せやろか」

「そうですよ」

「ほな香澄ちゃんはどやの?俺のこと」

「……え、印象は今のところ最悪ですけど」

 せめて推しとか関係無く出会えていればな、まぁそれが無ければこんなデートにまで発展しなかっただろうけれど。

 成田さんの人となりを知ってしまったからにはこれ以上深入りしてしまいたくない。

 なのに

「ほうかぁ…んでもここまでつまびらかにしたんやから、責任とって欲しいわ」

とか言うもんだから

「勝手に話したんやないですか」

と私は後ずさる。


「キスしたやん」

「成田さんが勝手に…」

「今更『ムリヤリやった』なんていいわけでけへんよ」

「………はぁ?」

 キレ散らかそうかどうしようか、いい加減にイライラしてフォークが皿の底を突けばピッと挽肉が飛んで…彼のシャツの胸へ着地した。

「あれ」

「うわぁ、ごめんなさい!おしぼり…あぁ…」

「あーあ、責任取ってもらわななー」

「……クリーニング代も出しますから…」


 拭けば拭くだけオレンジ色した油が拡がって染み込んでいく。

 持ち帰っていいなら食器用の中性洗剤を垂らしてタワシでガシガシ擦ってやるのにこれは目立っていけない。

「ええよ、帰って洗うわ」

「すみません…」

「あんまり乳首擦らんとって、勃つから」

「…‼︎」

私は彼の胸部に顔を近付けゴシゴシと刺激を与え続けていたのだ、ここに来て乳首のトピックばかりで私もいよいよげんなりしてくる。

「それは冗談やけど……まぁ急ぎ過ぎたけど、タイプいうのはほんまよ、香澄ちゃんみたいな顔好みやねん」

「ドウモ…」

「もうはっきり言うけどな、俺ロリコンやねん」

「ブッ‼︎」

気を取り直して口に含んだ水を噴き出してパスタの皿に飛沫しぶきが舞う。

 これも冗談なのか、それにしては思い切りが良過ぎた。

「ゲフンっ…がッ…は、はぁ⁉︎」

「昔からの趣向やねん、幼い子ぉ好みなん。年下な、小中学生くらいの子…さすがに手ぇ出さへんけど、香澄ちゃんは社会人やから合法ロリやんな」

成人式から5年経つのにまだ幼いですか、小学生は言い過ぎでしょう、私の体が目当てですか。

 聞きたいけど恐い、私はつい先程摘まれた乳首の上辺りを手で覆い隠す。

「ちょっと…気持ち悪いんですけど」

「せやろなぁ。でも残念ながら弟もおんなじ趣味よ、ロリコン。アイツはひとりの女が好きで固執しとるだけやけどね」

「はぁ」


 少ない個人情報によるとナリさんは学生時代からの彼女と現在も交際中らしい。

 中高生で好きになった子を思い続けるのと進行形の児童を求めるのは違うものだし後者は犯罪です、もう訂正するのも面倒だから私はタブレットを手に取りデザートのページを開いた。
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