泥より這い出た蓮は翠に揺蕩う

エピローグ・憎くて愛しい

90

　その夜、私は言い付け通り空き部屋で主人からのお仕置きを受けた。

　昼間に着けていたのとは違うシンプルなニップルピアスに替えて夫もノンホールのピアスを着けて、私の輪っかに専用のチェーンを繋ぐ。

「……」

「水蓮、君を繋いでいるのは誰だ？君のご主人様は誰だ？」

「…た、拓朗さんです」

「なってないな」

「あ…すみません…拓朗さま、ですわ、」

「うん、そうだな…俺の城にあの人の欠片かけらが入り込んでたとはね…不愉快だな」

　彼は自他に関わらず痛いことが嫌いだから私を無闇に傷付けることはしない。

　その点において完全に信用はしているけれどなんだか今夜は不穏な空気が漂っていた。

　これまでにニップルピアスにチェーンを繋げて軽く引っ張ったりはされたことはある。

　あれは痛くもないし辱はずかしめというソフトSMプレイとして興奮したので無問題である。

　でも今夜はもしかしてもっと手酷く虐められるのか、ゾワゾワ引ける腰なのに胎はらが夫を求めてじゅんと潤いきゅうと締まる。


「あ、すみません、そんなつもりでは」

「あいつらが死んで過去を払い切ったと思ってたのに…とんだピエロだよ、水蓮…俺の見てない所ではアレを着けてうっとりしたりしてたのかな」

「違います、今朝まであれに入れていたことは忘れてたんですもの！」

「どうだろうな…水蓮、君は誰のものだ？」

「拓朗さまです、本当に……あ、」

　夫は私からぶら下がるチェーンの端のカンを自分の乳首の輪っかに無理に通し、ついと身を引くものだから私もそちらへぐいと引かれた。

「外れないようにして」

「あ、っ…」

「水蓮、君は誰のものだ」

「拓朗さま、です」

「証明、できるか？」

チェーンの長さは30センチ、離れないギリギリの距離で夫は足を整えて身を倒す。

　ついて来いということなのだろう私も覆い被さるように上に乗って、

「…でき、ますわ…」

と彼の準備万端なモノを握り同じく待ち構えていた膣へと迎え入れた。