泥より這い出た蓮は翠に揺蕩う

5・身分と情緒の上がり下がり

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「…では、明日、また会社で」

「うん。ピアスが届いたら連絡するよ」

「はい♡」

　俺は会社から100メートルほど離れたコインランドリーの駐車場で彼女を降ろしてそのまま自宅へと帰った。

　もっと近いコンビニもあるのだが関係者がよく利用するので見つからないようにとの配慮で、彼女は会社の駐車場まで歩き、停めてある車を拾って帰ることにしたのだ。


「…家でも…良かったんだけどな」

　ひぃ様はもう居ないのだから俺が泊まったって問題は無いはず、別にホテル代をケチりたい訳じゃないがお互い独り暮らしなのだからどちらかの家を使う方が一般的だと思う。

　前回もホテルにしようと言い出したのは彼女からで、行ったことが無いと言うからそうしたのだが…もし家に立ち入らせたくないからという理由だとしたら嫌だなぁと運転しながらぼんやり考えた。


　ちなみにだが俺の部屋は郊外の１LDK、過不足無い分相応の賃貸マンションで、それなりに散らかりそれなりに片付いている。

　その部屋に帰り仕事着を脱ぎ捨て肌着でベッドへダイブ、慣れたしなりと唾液臭い枕に安堵あんどした。


「ふー…もしかして…SM器具とか置いてんのかな…三角木馬とか…十字架とか…」

　彼女が自宅へ呼びたくない理由があるとすればその線が濃厚か。

　しかしそれより嫌なのは『ひぃ様との思い出に立ち入られたくないから』とかだったりするのだが…聞いてみないことには分からない。


　昼飯は朝食用に買って余って持ち帰った菓子パンだ、手間を回避した俺は安心して昼まで二度寝を楽しんだ。



つづく