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3・いけない管理職

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「ん……ゔえ…」

「出して、ごめん…笹目さん上手だな…いや、ごめん」

ばくばく高鳴る心拍を感じつつその余韻に浸れないのは少々しゃくだ。

 けれど俺の子種を口に含む彼女を楽にしてやりたくて、座席の後ろに吊るしてある物入れからティッシュを引き出し彼女の口の下へ持って行く。

「出して、飲むな」

「ん…べぇ………ん…白い、でふね…」

とろり山芋のように粘り気のある液体が俺の手の上に戻って来る、味はお気に召さなかったのだろうか彼女は「失礼します」と告げて舌をティッシュへ擦り付けた。

「…ごめん、苦いよね」

「そんなに謝られると…困ります」

「え、あー…そう?まぁそうか、笹目さんからしゃぶり付いて来たんだっけ」

「違います、常盤さんからお願いされたから……あの、そろそろ名前で…呼び合いませんか?」

「そうだね……水蓮すいれん…、水蓮、」

「はい……拓朗たくろうさん」

「呼び捨てで良いのに」

「いえ、趣向ですので」

「あぁそう」

俺より下に居たいんだね、ひぃ様と育んだ価値観は崩れることは無いんだろうな…それは寂しくもあるが喜ばしくもある。

 仕事で人の上に立つ彼女も好きだが、俺の後ろに控えめに立つ彼女も好きなのだ。

 誘い受けのようにエッチなトラップを仕掛ける小悪魔的な彼女だって当然好きと思えた。

 俺も勝手なものでわきまえた女は好きでも抑圧された女は好きじゃない。

 繋ぐのは好きでも縛るのは好きじゃない。

 これはワガママなのか、しかし俺と同じ想いの男は幾人かはいるはずだ。

 合意してるけど『嫌がってみたい』『無理矢理にされてみたい』、女性誌の読者の声アンケートでそんな記事を読んだ覚えがあるのだ。

 こちらだって本気で嫌がられれば引き下がるが、バラエティにおける『押すな押すな』ノリみたいなことがセックスでも起こっているのが現実である。

 要は女性側からグイグイ来られ過ぎると男として立ち位置が分からなくなるんだよなぁ、なので適度に控えめで適度にエッチな女性が良いなぁ、俺のワガママなので言いはしないが。


「…昼メシ…は…いいか…腹一杯だわ」

「でも体力付けないと」

「良い、弁当っつってもビスケットだ、栄養補助食品」

管理職になってすぐの頃は緊張で食事が喉を通らなくなって、休憩といえば携行食をサッと腹に入れてお終い、それが2年ほど今も続いている。

 もう普通の食事が摂れるはずなんだけど、舌が乾きに慣れてしまったので今さら水気のある物を食べるのが気持ち悪い。

「まぁ…相変わらずですね、よろしければ作って来ましょうか?」

「周りにバレちゃうだろ…社内恋愛は何かと…都合が悪い」

「んー…まぁそうですか」

 禁止はされていないが周知されていると万が一に別れてしまった時に気を遣わせてしまう。

 後戻りできない婚約とかでもしない限りおおやけにしないのが暗黙のルールである。

「堂々としたいけどね、まだ若輩だし…」

「分かります」

 会社の敷地内に居る時は気を張り詰めていた、それが彼女と関わることで変わってきた。

 私有地とはいえお天道てんとさまの下でこんなことをするなんてちょっと前の自分では考えられないな、よく働いた彼女の唇を指で撫でて背中を曲げる。

「水蓮は食べて来なよ、午後からも長いんだし」

「えぇ、それでは…また、」

「あぁ、また」

 軽くキスをして、彼女は人気ひとけを確認しつつ店へ戻って行った。
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