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8・過去、嘘、本当
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しおりを挟む「そして…私の意志もお伝えしました。学費や養育費ばかりでなく親の分まで出して頂いて、本気で…やはり風俗で一気に稼いでお返ししたいと思ったんです。今となっては浅知恵ですが…男性に対して何も思わないのでビジネスライクに…割り切って仕事にできるとそう思いました」
「とんでもねぇなぁ…」
「そう思います、今なら…けれど当時はそれくらいしなければ恩返しできないと思ったんです。それに…ひぃ様が経営してらっしゃるお店、ゆくゆくは継がなければならないのかと…世襲制ではないんですが…その時は本気でそう思ったんです。ひぃ様はしっかり話を聞いた上で『分かった』と…そして『どこで働くかは自由だけどしっかり技を身に付けてからでないと稼げない』と仰いました」
「ふ…む…?」
「それで…『これはセックスではなく業務上の指導だ』と…前置きをされて…」
「初めてを、あげたってのか」
「はい」
そう答えた彼女は晴れやかではなくて、むしろ淋しげで暗い面持ちに変わっていた。
彼女は恋人として抱かれたかったのにひぃ様はそこまでは立ち入らせなかった。
ただ可愛い養女の頼みを聞いてやりたくて重い腰を上げたというところだろうか。
「んっ…あのさ、その…ひぃ様って…レズビアンだったの?」
「んー…どちらもいけた…みたいです……たぶん…」
「ほえぇ……今さらだけど…水蓮は?」
「考えたことが無くて…性別云々よりその人を好きになるという感じでしょうか…これまでに2人しかいらっしゃいませんが」
「ふむ」
それはひぃ様と俺で良いんだよね?人差し指で鼻先を触り試すような目付きで見つめれば、彼女はコクリと頷く。
「セックスの意味合いなんて何でも良くて、私にとっては恋が報われるのと同じことで…むしろ願ってもないことで…ひぃ様は元プロでしたから…手取り足取り教えて頂きました」
「なるほど…指導…それでフェラとかも教えて…もらったと…」
「はい。箇所ですとか動き方も…」
「それを…15年近くか…敵わないな」
これから俺たちが関係を続けてもその期間を越えられる時には共にアラフィフだ、勃つかどうかも分からないしレスになっているかもしれない。
あからさまに悔しそうな顔をしてやれば彼女は柔らかく笑い、
「お体が悪くなってからはめっきりでしたので関係を持ったのはそれよりもっと短かったですが……年月ではありませんわ、深さですの」
と俺の右手を引いてニップルピアスに触れさせた。
「ひぃ様とは戸籍上は親子で、恋人かと聞かれれば今でも『はい』と答えられる自信はありませんの…抱いて頂いても不安で…ピアスはその後ですね。何かペアの物でも持とうかという話になりました。前にも聞かれて濁してしまいましたが…刺青は体に残りますし行動が制限されてしまいます、指輪や耳のピアスでは都合が悪くて…その、一応お嬢様学校だったものですから。セーラー服で鎖骨まで見えるのでネックレスも駄目、と」
「それで、開けたのか…思い切るな…」
「拓朗さま、先程『提案する方もおかしいけど受け入れるのもおかしい』と仰いましたよね?提案したのは私、ひぃ様は受け入れて下さっただけ」
つまりは水蓮がおかしいということだ。
先程の俺の発言から根に持っていたのだろうか、ならばその時に指摘してくれれば良いものを。
「お詫びして訂正するよ……それで、その…痛くなかったか?開けるの」
「ふふ…後日、ひぃ様が懇意にされてるお医者様に行き、して頂きました…麻酔が切れれば痛みはありましたが、お揃いになれた嬉しさの方が強くて…嬉しかったんです」
「…お揃い?」
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