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4・支配からの、解放

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 ブラジャーの胸当て部分を内側に折り込めばぷるんとあの金属の塊が跳ね上がる。

 やっぱり痛々しい、眉をしかめた俺を目視してから彼女は親指と人差し指で針の先の丸い球をくるくると回す。

「…そこが取れるんだ…」

「えぇ、ネジになってまして…ほら」

「…あ、」

彼女が取れた球をテーブルに置くが、転がっていきそうだったので俺はおしぼりを開きその上に移してやった。

「すみません」

「いや」

 反対側の球をゆっくり引くと蹄鉄ていてつの飾りがバランスを崩して受けていた手のひらにポトンと落ちる。

 居酒屋の暗い照明を反射するそれは初見の時よりもやや大人しくムーディーに感じる。

「…ほら、このように」

「……痛くない?」

「全く…穴を開けてからもう10年以上経っていますもの」

「手入れとかも…こうしてるの?」

「はい、外して綿棒で消毒して、他の物と着け替えたりしてます…外してみます?」

彼女は左側の乳房もあらわにして俺にそう問うた。

「え、」

「支配、からの、解放」

 酒は入っていないが、こちらを窺う瞳が妖艶ようえんつやっぽい。

 勤務終わりに塗り直したのだろう、濃いピンク色のリップがさらに彼女の色気を増幅させている気がする。

 見事に当てられた俺はその唇へキスをして、

「……されたがりだな」

と震える両手を丸出しの乳首へと運んだ。


「怯えてらっしゃる」

「俺、痛いのダメなんだよ…だからSMとかも…怖い」

「あら…臆病」

「焚き付けても無理だよ、これピアスごと愛するには時間が掛かる」

「時間を掛ければ良いのですね……あン♡」

ブレる指が小さな球を捉えきれず柔らかな乳房に当たる、彼女は至福そうに俺を見下ろし目を細める。

 くるくる回して球を外し、おしぼりの上に置いてから蹄鉄部分をちょんと摘む…どれだけ光るのかと興味本位で少し傾ければ、

「あんッ♡」

と彼女が割に大きめの声で鳴いた。

「水蓮っ…」

「すみませんッ…引っ張られたので」

「あ、痛かったか、ごめん」

「いいえ、そこに…拓朗さまと私の意識が集中しているのがどうにも快感で…堪らないんです」

「ちゃっかり『さま』付けするんじゃないよ…ん、取れた」


 針も蹄鉄もおしぼりに揃えて置いて、彼女は良い機会だからとバッグからウエットティッシュを取り出して乳首の清掃を始める。

「…もう、普通の胸でしょう?」

「うん…普通の…おっぱいだな」

「…最初の…拓朗さまが転勤して来られて初めての呑み会のこと、憶えてらっしゃいますか」

「うん?酔ってたけど…水蓮がお酌してくれたのは憶えてるよ」

 そう言って乳頭の先の陥没した溝にティッシュを爪で挿す作業をじぃと見ていると、

「あの時、拓朗さま…私の胸ばかり見てらして…恥ずかしかったですわ」

と思わぬ爆撃を受けた。

「え、」

「ふふ、気付かないとでも?目線の向きは分かりますの、『所作がキレイ』とおっしゃりながら胸ばかり凝視して…酔ってらっしゃるとはいえ、嘘の下手な方だと思いました」

「……ごめん」

「良いんですの…おかげで、拓朗さまは私の体に関心がおありなのだということが分かりましたから」

ストラップをぴんと外して折り込んでいただけのブラジャーをずるんと腰まで下げれば、反動で大きな丸が並んで揺れる。

 俺は口には出さなかったものの行動で丸わかりだったのか恥ずかしい、でも嘘じゃない。

 日常的な仕草がしなやかで美しいと思ったんだとしどろもどろに伝えれば「ふふ」と笑い両の手で乳房を挟み寄せて俺を試し始めた。
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