泥より這い出た蓮は翠に揺蕩う

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
36 / 92
6・俺の、水蓮

36

しおりを挟む

「拓朗さん、アイス溶けてしまいます」

「じゃあもっかい冷凍しとこう、風呂上がりに食べたい。そういや…今日はホテルじゃなくて良かったのか?」

「ええ、世のラブホテルという物がどんな所か分かりましたので。…行ったこと無かったので、お泊りしてみたかったんです。いきなり拓朗さんのお宅にお邪魔するのも不躾かと思いましたし」

「そう…じゃあ社会見学は済んだわけだ……水蓮…イチャイチャしたい」

「あ、では…ピアス、お着けになりますか?」

「あー」

盛り上がっていた気分が乳首のシルエットに邪魔される、俺はソファーに置いていた手提げから巾着を取り出してアイスを仕舞った彼女へ渡した。

「ありがとうございます」

「一緒に選んだからサプライズも無いけどね」

「いいえ、充分に嬉しいですわ…どうしましょう、今着けてみてもよろしいですか?」

「そりゃあ好きにどうぞ…うん」

 そう言うと彼女はその場でワイシャツを脱ごうとするので、俺は慌てて目線を逸らす。

「……水蓮、大胆だな」

「すみません…拓朗さまももう慣れてしまわれたかと」

「慣れないよ、ピアスもおっぱいも……勿体ぶってくれよ」

「それは失礼しました…座りますね」

 ソファーに掛けて少しずつあらわになる白い肌、そりゃあ一緒に風呂も入ったしそれだけでギンギンになるほど不慣れではない。

 けれど丸いブラジャーから丸い塊がボロンと飛び出すのは緊張感が走るのだ。

 現に本日のピアスはアプリで見たような南京錠なんきんじょうの形をしており、乳頭の中を緩いとは言えカーブ状に金属がハマっているなんて見ただけで痛々しかった。

「…どんな心境で」

「何となくですわ…外して下さいますか?」

「え、えー…また?分かんないよ」

「見た目はこんなですが蹄鉄ていてつのと原理は同じですの。バーベルにぶら下がっているだけ…このネジを、こう」

 いい大人がぶるぶる震えて米粒みたいな球を摘む、くるくる回して外したらローテーブルの上に置く。

「あん」

 左手に意識をやればピアスの針を支える右手がお留守になりくんと引っ張ってしまった。

 咄嗟とっさに謝るも、彼女の顔はじわじわ紅潮してきて痛がっているようには見えなかった。

「…引っ張ったりするプレイは…してないよな?アプリで調べた時に…重りとかあるの見たんだ、引っ掛けるやつ…マジで気が知れない」

「男性でも開ける方はいらっしゃいますよ?」

 そう言い細い指先で俺のワイシャツの胸をちょんと突く、ピンポイントで突先の在処ありかを当てられた俺は「わぁ」と情けない声でまた右手が揺れてしまう。

「っア♡」

「ごめん、ごめん…抜くから…千切れたりしないか?……あ、抜けた…こわ…」

「拓朗さまも着けて下さればお揃いですよ、チェーンで繋いだりできます」

「………萎えるわー…」

「残念ですわ」

 一気に取ってしまいたいが手間取ることが予想されるし、そうなると彼女はまた呼吸困難になってしまう。

 右の乳房だけピアスを外して新しいものを開封する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

山あり谷あり…やっぱ平坦なのがいいよね

鳥類
恋愛
ある日突然前世の記憶が蘇った。まるでそれを覆っていたシャボン玉が割れて溢れ出たように。 思い出したことで気づいたのは、今自分がいる世界がとある乙女ゲームの世界という事。 自分は攻略対象の王太子。目の前にいるのは婚約者の悪役令嬢。 …そもそも、悪役令嬢って…俺が心変わりしなきゃ『悪役』にならないよな? 気付けば攻略対象になっていたとある王太子さまが、自分の婚約者を悪役令嬢にしないためにヒロインさんにご退場いただく話です。 ヒロインは残念女子。ざまぁはありますが弱めです。 ドラマティックな展開はありません。 山も谷も盛り上がりも無くてもいい、大切な人と一日一日を過ごしたい王子さまの奮闘記(?) サラッとお読みいただけたらありがたいです。

鬼狐神さまの生贄花嫁

満景美月(みかげみづき)
恋愛
不遇の少女は生贄の花嫁なのに、鬼狐の旦那様が甘々溺愛してくる〜!?

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

続・上司に恋していいですか?

茜色
恋愛
営業課長、成瀬省吾(なるせ しょうご)が部下の椎名澪(しいな みお)と恋人同士になって早や半年。 会社ではコンビを組んで仕事に励み、休日はふたりきりで甘いひとときを過ごす。そんな充実した日々を送っているのだが、近ごろ澪の様子が少しおかしい。何も話そうとしない恋人の様子が気にかかる省吾だったが、そんな彼にも仕事上で大きな転機が訪れようとしていて・・・。 ☆『上司に恋していいですか?』の続編です。全6話です。前作ラストから半年後を描いた後日談となります。今回は男性側、省吾の視点となっています。 「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...