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1・調教済みだ

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「それか手で、目をつむって頂けるなら胸で挟みますので好きに動いて…いえ、私が動きますので、そこにローションがありますからお借りして」

「待って、待って……あーそう、そこまで仕込まれてんの、」

「……一般的なカップルもそれが当たり前だと…教えてもらって…」

「あー良い良い、うん…一般的ではないよ、する人はいるだろうけど…俺はそんな、罰ゲームみたいなことをさせたい訳じゃない…んー…」

元カレからの教えをこちらに教えて頂かなくても結構、嬉しいかと言われれば嬉しいがなんだか畏れ多い気もする。

「私のせいでその…気が削がれてしまったので…私の意思で、させて下さい」

「なら…ちょっとだけ…あ、ごめん胸は仕舞ってくれ…ボタンも、そう」

「はい…ピアス、外しましょうか」

「いや、今日は良い、着けといて」

「寛大なんですね…」

彼女はブラジャーを着け直してボタンを上まで留めた。

 これは別に紳士的な振る舞いとかではない。

 目の前でピアスを外されてあの細い針を見るのが怖かったし、ピアスが抜けた後の乳首がどんな状態なのかを見るのが怖かったのだ。

 俺も過去に恋人の耳のピアス穴を見たことはあるし引き抜いたからといって空洞になって向こう側の景色が見えるなんて思い込んではない。

 だが、一度裂かれて針の穴の形に丸まって定着した肉の感じがどうも怖い。

 ちなみにだが同じ理由で、耳でも拡張するタイプのピアスは無理だ。

 見ていて肝がひゅんとなる。


「立たれますか?」

彼女は床へ降り、自然に慣れた動きで絨毯じゅうたん敷きのそこへ正座してぴっと三つ指を立てた。

 これが彼女が教わった作法なのか、仕事着のシャツとチノパンでそんなことをするもんだから俺は彼女を『笹目フロア長』として見てしまう。

 俺たちは同期でフロア長に昇進した時期もほぼ同じだった。

 初任地が離れていたので若い頃がどうだったかは知らないが、その頃の彼女も是非見てみたい気はする。

「いや、笹目さんがやり易いように…」

 そう言えば彼女は大きな目をまん丸にして意外そうに眉を上げ、

「…なら、座って下さい」

とベッドのフチを手で指し示した。

「うん」

「スラックスが汚れてはいけませんが…このままされますか?それとも脱ぎますか?」

「脱ごうかな」

「はい」

端まで移動した俺を一旦立たせた彼女は、ベルトのバックルが音を立てぬよう手で押さえながら開けて静かに抜いて床に落とす。

 腰ボタンを外してするすると足元へスラックスを降ろし、何故だか彼女の顔は笑っていた。

「ふふ、パンツもお可愛らしいです」

 と何の変哲もないボクサーを褒められれば中心が少しピクンと疼く、もっと良い物を選んで来れば良かったと思ったが柄はどれも似たり寄ったりでそう変わらない。

「笹目さん、そんなご奉仕みたいな喋り方をしなくていい」

「そうですか、すみません…癖で」

「普段の…笹目フロア長が好きなんだ」

「……やだ、」

 頬を赤らめて顔をそらすその仕草、俺は彼女のその表情が好きだった。


 1年前、今の店舗に転勤して来て最初の呑み会で、彼女は俺のグラスにビールを注いでくれた。

 別に俺の歓迎会とかいう訳でもないただの食事会だったのだが、美人にお酌されれば気分が良かったので「笹目フロア長はキレイな所作しょさをしますね」と遠回しに褒めたのだ。

 そうすると素面しらふの彼女の頬はみるみるうちに赤く染まり、どもりつつ「ありがとうございます」と言って顔を向こうへそらした。

 ハラスメント防止が大きく叫ばれる昨今において容姿について言及するのは絶対にタブーで、「笹目さん、実に良いおっぱいですね。テーブルに載ってしまってる、重たくないですか?」と本当は思っていたが、アルコールが入ろうとそれを漏らしてしまうほど俺は阿呆ではなかった。

 気になり始めたきっかけはきっとそれだった。

 日々の中でしなやかで女性らしい動きが美しくて目を引いた、そして照れる仕草が可愛らしくて心の中にずっと残っていたのだ。

 しかしまぁその彼女を脚の間に挟んでフェラチオさせる日がこんなに早く来るとは。

 嫌がればさせたくないが望むのだから仕方ない…でもできれば清純派であって欲しかったかな、俺はワガママを口には出さずゴクンと飲み込む。
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