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最終章・嫁が可愛いのでなんでもできる
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しおりを挟む「かわい、オカンにも電話しといたで。明日来るって」
「うん……ハルくん、うち猛獣みたいやったろ、ごめんな、」
体が落ち着くまで安静に、分娩台の上に寝たまま胸には綺麗になったシワシワの我が子を抱き、時折「ふえぇ」と声を上げるのを夫婦で優しく見守る。
「ええよ、出産は命がけやんな……いっくんの時はひとりで頑張らせてもうて悪かった…すまん」
「お母さんがおってくれたよ、しゅーちゃんも来てくれたし…ハルくんは…今日来てくれるとは思わへんかった」
「ナナちゃんがな、『行け』って言うてくれてな、うん……もし…無事に帰って来ぇへんかったらって思うたら……とんでもない後悔やなって…な、思うて、うん」
「そう、ふふっ……あ、しゃっくりしてる…かわいー…」
父になった実感はまだ無い。
しかし母になった妻は年上の自分より格段にしゃんとしており…娘を慈しむ未来を見つめながら、ここでやっと守谷の目から涙が一筋流れ落ちた。
「愛してるよ、ミラちゃんも赤ちゃんも…」
「うん………ん?ハルくん泣いてる?」
「泣いてへんよ、うん…」
・
分娩室から個室へ戻り、さて帰ろうかと時計を見れば時刻は夜中の2時を回っていた。
晩秋の夜空は澄んでいて月と星がよく見えて…守谷は駐車場で缶コーヒーを買って車にもたれかかり飲み、また少し泣く。
『無事に生まれた。背中押してくれてありがとうな』
もう寝ているだろう奈々へそうメールを送ると、
『おめでとうございます。店は滞りなく締まりました。お大事になさってください』
とすぐに返信が来た。
「…月が付く名前もええなぁ……うん…」
長男は「樹」だから統一感があっていいかも?前もって考えていた候補も加味しながらスマートフォンへメモを取る。
そして守谷は安全運転で自宅へ戻り、この夜も息子に抱きついて眠った。
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