46 / 87
12月・嫁が可愛いのでどんな夜も燃える
34
しおりを挟むさて話は現在、12月に戻る。
騎乗位を試した金曜、その翌金曜日も避妊はしたが同様に勤しみ、さらにその1週間後の昼のこと。
「おぅ、どないした⁉︎腹痛いんか?」
台所で蹲って小さくなった嫁を発見し、守谷が駆け寄る。
「ん…生理で…ちょっと痛いだけや…薬が効かへんかった…」
「お前の『ちょっと』はちょっとやあらへん、寝とれ、な」
「ん…」
未来は初日にずんと痛みが来るタイプで、以前は吐き気どころか嘔吐してしまうほどに症状が酷い時もあった。
産後に吐き気症状は改善、それでも重い痛みは変わらずで、我慢強い彼女は朝から黙って堪えていたのだ。
「おい、あ、立ちくらみか、掴まれ、ミラ、おんぶすんで。……よっと」
リビングでDVDを観ている息子に一言断り、寝室まで嫁を運びベッドへ下ろしてやると、
「ありがと…」
と気丈な嫁が力なく笑うので守谷は余計に心配になる。
「ほい、布団な、かけて、……なんや、」
青白い顔色の嫁が、虚な目で守谷の服の裾を掴んで離さない。
そしてしっかり者の彼女が消え入りそうな声で
「撫でてぇ…頭と、お腹と…」
と訴える。
「ええよ、うん…」
体の作りが違うのだからどうしたって分かってあげられないその痛み、代わってあげられるなら代わってやりたい。
守谷は本心からそう思っていた。
「……はぁ、生理来てもうた…」
未来は目元を腕で隠して上唇を噛む。
生理が来る、ということは今回の子作りは成就しなかった、ということだ。
また妊娠には繋がらなかった…そこまであせることでもないのだが、生理時のホルモンバランスの影響もあるのだろう、未来はひどく落ち込む。
「ええわ、気にすんな。ミラはまだ若いんやから…赤ん坊できるまで、何べんでも仕込んだるって」
夫とてそれなりにショックはあるが、ともあれ今はとりあえず嫁の心身のケアの方が重要なのである。
「この前オレが股間蹴られた時も結構凹んだから…気持ちは分かるわ…、はは」
守谷はわしわしと嫁の頭を撫で、布団に手を入れて腹も摩った。
「うん、一緒にせんとってほしい…」
「いや、ほんまに…経験できるもんならさせてあげたいよ、…いやでも気絶したら危ないしな、付いてたからってオレが蹴るわけにもいかんしな…」
「うん…うん…」
下らない話をしているうちに未来の返事はだんだん小声になり、彼女はすぅっと眠りについた。
「…寝たか…焦らんでええのにな、ふぅ…」
守谷は嫁の手を握って頬を寄せ、保護者の目でこの寝顔を眺める。
生理痛を遥かに凌ぐ出産の痛み、よくよく考えればそれを再び嫁の細い体に耐えさせねばならないのか。
守谷は無責任に「産んでくれ」などと吐かした自分を恥ずかしく思った。
「はぁ…和痛とかにしてもらおかな…代われるもんなら代わってあげたいわ…ミラちゃん…」
守谷もそのままそこで眠りこけ、未来が目を覚ました時には握られた手は汗でしわしわになってしまっていた。
つづく
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる