嫁が可愛いので今夜は寝ない

茜琉ぴーたん

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11月・嫁が可愛いので喧嘩も利用する

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「…………やってもうた…でも勃って良かった…」

勃起と精子の質の連動性はさておき、達成感と余韻に浸りながら守谷もりやは風呂に入り、ふと昨夜の事を思い出す。

 毎週金曜日は夫婦二人で寝られる貴重な日、昨日もそれなりに熱く妻を抱いたのだった。


 守谷とて本気の本気で子種が駄目になったとは思っていない。

 だが最近子作りに少々ナーバスになっている部分があり、蹴られただけであのような醜態を晒してしまったのだ。

「ミラちゃん…怒ってたな…おっぱいは禁句やったな…」

いくら反応が冷たかったからといって、妻と他の女性を比較してしまった事を守谷は深く反省した。





 一方未来みらいは寝室には入らず、夫が脱衣所に入ったのを確認してから2階の端の犯行現場、オーディオルームの家宅捜索に入っていた。

 夫の入浴時間は把握しているので余裕を持って周辺を捜索、問題のDVDを難なく発見する。

「これ…レンタルちゃうやん…」

 AVはいまだにディスク派の守谷、普段はレンタルで済ますのに珍しく購入までした作品がくだんの若妻モノであった。

 パッケージには着衣でもわかる豊満な胸、ムチムチとした脚、そして興奮を煽るよう工夫を凝らした長ったらしいタイトル。

「変わってへんなぁ…昔っから…」


 守谷は元々、このような肉感的な女体が好みなのだ。

 それは未来も結婚前から知っているし個人の趣味嗜好を否定するつもりは無いので、今回のように比較なんてされなければ気にはしていないつもりだ。

 気にしても自分の胸が膨らむわけではないし、小さい胸でも夫はいつも可愛がってくれるし。

 守谷が風呂から上がるまであと5分ほど、上映して中身を確認するには時間が無いし、夫以外の男性の裸体をひどく嫌悪しているので好んで観たくもない。

 仕方なくパッケージの裏のハイライト写真を薄目で眺め、なんとなくの内容と雰囲気を読む。

 手淫、口淫、大きい胸であれやこれや…なるほど、未来はこの界隈に明るくないしそのジャンルの名称も知らなかったが、書いてある文言と写真からなんとなく「主観モノ」であると推測できた。


「男は映らへんやつや……はぁ?」

 視聴者の主観であたかもこの女優とシているかのような感覚になれるAV、未来は自分以外の女と夫がまぐわう様子を想像してしまい勝手に苛立つ。

「ご奉仕…従順……世の中の妻を何やと思てんの…?」

主人に奉仕する、子種をせがむ、年下で可愛いエッチな妻、このジャンルの大体の趣旨を理解した。


 守谷は新婚旅行の夜に、

『そもそも嫁に貰うつもりで同居させた訳ちゃうからさぁ。ましてやその…跡取りを産ませようとか…時代錯誤なこと思てへんよ』

と言ってくれたのに、そういう趣向のものを観ていることに未来は少しガッカリする。

 もちろん、「女子高生」なら制服、「ギャル」なら明るい性格、それぞれのステレオタイプを誇張こちょうして描いているということは分かっている。

 「若妻」のイメージで楽しみたい人の需要に応えたらこういう形になるのだろうが、あの言葉が嘘でないなら夫はこのジャンルを選んではいけないだろう。

 先月のホテルでも、

『嫁系がええねんけど、大概不倫とか寝取られやねん。かわいい嫁とイチャイチャする、そんなんでええねん。地雷踏みたないから、自然な素人モノや』

と言っていたのに。

 イチャイチャなら「恋人」ジャンルでも良いのでは、未来としてはそう思うのだ。


 うへぇ、とDVDを戻そうとすると、まだ奥にも1列あることに気づく。

 覗き込むと同じ女優の名前で4本、もっと際どそうなタイトルの背表紙が並んでいた。

「きっしょ……」


 もうすぐ夫が風呂から上がる時間、パッケージをあった場所に戻し、オーディオルームを後にした。
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