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10月・嫁が可愛いので今夜は寝ない
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しおりを挟む未来は今日、大きい目を更に大きく描き、まつ毛も盛っている。
息抜きがてら妻を連れ出した守谷だったが、久々の夜のお出かけと嫁の懐かしい装いと珍しい化粧に当てられてしまい、会の途中からはどのホテルにしようかとそればかり考えていた。
「でもパパ、泊まんの?」
妻は隣を見上げて尋ねる。
「休憩でええよ、宿泊扱いになるかもしらんね。オカンらが起きるまでに家におればええ…なぁ、パパとちゃうで」
「…ハルくん」
「ふふ」
部屋に着くと未来を先に入らせ、スマートフォンのアラームは帰り時間目安の20分前にセットしておいた。
『プルルル…』
「ひゃっ…な、内線かぁ⁉︎」
「はい、………るーむ…あぁ、」
飛び退いた妻を見てふふと笑った守谷は受話器から口を離し、
「ルームサービス、1品無料やって。そこの写真、どれにする?」
と伝えると、未来はテーブルの上にあった月替りサービスメニューの写真を見て「これ」と指差して答えた。
「3番で、…はい、失礼しまーす、」
つい仕事口調で受話器を置き、守谷はメニューをよく読む。
「…裏口に届くらしいで」
「どこやろ、ここかなぁ……トイレやな」
「お、こっちやな。テーブルが付いてる…スタッフと客が顔を合わさへんようにできてんねんな、」
久々のホテルに浮き足立ち二人は家探しを始め、部屋の奥の扉を開けると半畳のスペースがあってさらに従業員通路に繋がる裏口ドアがあった。
「持って帰れんかなぁ?」
「無理やろな…届くまでに風呂の湯入れとこか」
守谷は風呂の湯張りを始め、アメニティの中の入浴剤を浴槽に投入してベッドルームへ戻る。
ちょうどそちらでは未来がジャラジャラ盛ったアクセサリー類を外しているところで、大きなフープピアスも外し「ふぅ」と息をついてツナギのファスナーに手を掛けたところだった。
「ちょ、ちょい、ミラちゃん、まだ脱がんでええがな。そらオレの仕事や」
「えー、着替える。ツナギは実用的やねんけど、肩凝るわ。女はトイレ行きにくいしな」
「…まぁな…ほな脱ぎや…」
袖を抜くと細い上半身が露わになり、サラシ替わりのタンクトップを脱いでカップ付きキャミソール1枚になると…その上からでもわかる、結婚時と変わらない体型を見て未来がぼやく。
「今日、みんなおっぱい大きくて惨めやったわ…」
「…大きさが全てやないよ。何べん言わすん?オレはこのつるぺた好きやで」
「褒めてへんやないかぁ」
「分かりきってるやんか。オレが好きや言うてんの」
守谷は妻へ向き直り、カップの上から胸の突先をつねろうと探る。
「やめてぇな、も、パパ、」
未来は手で応戦するも払い退けられ、すぐに捕まった。
「ぃやぁ」
「これも脱ごか」
「やだ、もー寒い!」
「あっためたる、オラ、」
細い体を後ろから羽交い締めにしてちゅ、ちゅ、と首筋から耳へ唇を沿わせ、守谷は
「あんなデカいピアス付けて、痛ないんか」
とピアス穴の辺りをはむはむ味わう。
「んん♡痛ないよぅ」
「さよか…見た目、痛そうやねん。そう思う人間もおるって知っといて」
「わかった、っん♡」
『ガチャ』
ラブな雰囲気が出始めた時に裏口のドアが開き、壁付けの折り畳みのテーブルを起こして皿を置く音、扉の閉まる音、最後にベルが鳴りルームサービスを届けたという合図が知らされた。
「たこ焼き来た♡」
「自分、猫舌やんな。ちょっと待っとき」
守谷はキャミソールの裾から大きな手を滑らせ、小さな膨らみに触れる。
出産前後に少し大きくなったが、それも僅かな期間だけだった。
ふにふにと感触を楽しみ、時折下から鷲掴みにすると、未来が小さく鼻から息を抜いて首をすくめる。
「…ホテルやから、今日は声出してな」
「んー」
「脱ぐか。万歳して」
「子供ちゃうねんぞ」
ムッと口をへの字に結ぶが、手は言われた通り万歳の姿勢を取って脱がしてもらった。
「たこ焼き取ってくるから、待っとき」
「ほんなら今脱がさんでも良かったやんか!」
「せやね」
守谷は嫁の恨み言を背中に受け、裏口のドアからたこ焼きを回収し、それを未来まで届けると風呂水を確認しに離れた。
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