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最終章・嫁が可愛いのでなんでもできる
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しおりを挟むいきみを逃がしながらまたしばらく横を向いて尻を摩り、間隔が短くなってくるといよいよ仰向けになり脚を上げて固定される。
「旦那さん、出るなら今よ、」
「おります、最後まで、」
「ゔあ…あ、」
守谷の応えを聞いてから分娩室の扉はしっかりと閉められ、看護師が産科医に準備を知らせに動いた。
「ミラ、息止めんな、」
「ゔーーー…あーーー、」
「上手よ、そう、まだよ、まだ、ん、吸ってー、吐いてー、吸ってーー、はいいきんで!」
「ゔあー!」
「(あかん、こわい…)」
「ほら見ろぉ、ゔあっ…こないなトコっ…見られたなかったぁ、あ!」
「息してねー、はい、出てきてるよ、上手よ、守谷さん、吸って、吐いてー、吸ってー、いくよ、はいいきんで!」
「ひやあぁア!」
まるで獣、見たことない聞いたことのない妻の声に守谷はビビり倒し…未来よりも多量に汗をかいて握った手に力を込める。
「大丈夫よ、上手い上手い、もうひと息で出てくるよ、頭見えてるからね、」
「あ、いきんじゃう、出ちゃう、」
「うん、あ、出そうね、ゆっくり、息止めないで、吸って、吐いて、吸って、いきんで‼︎」
一瞬守谷の手を握る力が弱まってすぐに馬鹿力で潰すほどに復活して…
「きゃあアっ!あっ!あッッ‼︎‼︎」
一際甲高い声が響いて、待ち構えていた助産師の腕の中へずるりと小さな命が滑り落ちた。
ぴしゃぴしゃと吹き出る水気の音、か弱い泣き声、
「おー、切らずに出た?頑張ったね」
と合流した医師は未来の腹を押して後産の手助けをする。
「あ、あ、いだぁい、あ、」
「ミラちゃん、ようやった、あ、」
「いたぁ、い、ふぇ、」
「ん、頑張った、ほら、泣いとるわ、」
体を拭いて体重を測って、長いヘソがついた赤子を見ればその儚さに未来の目から涙が溢れた。
「旦那さん、胎盤とか見ておく?」
「たい?」
「これ」
医師が差し出したトレーに乗った赤黒い塊、目にした守谷は出かけていた涙が引っ込み、
「おぅふっ…」
とあからさまに吐き気を催す。
「裂けてるから会陰縫合するね。旦那さんはもう出ておいてね、終わったらまた呼びますから」
「あい…」
赤子の他に出るものがあるなんて知らなかった、縫うことも聞いてはいたが実感が無かった。
そして生まれてすぐの我が子のあの赤さ、壮絶すぎる出産シーンはしばらく守谷の夢に出ては悩ませるのだった。
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