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最終章・嫁が可愛いのでなんでもできる
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しおりを挟む翌週、水曜日。
仕事終わり、二人は会社近くのファミリーレストランにて待ち合わせをして夕食を摂った。
「オレ、実家から出たことあれへんからあんまり機会無かってんけど…ファミレスの飯も好きやねん…美味いよな」
「企業努力やろ…人が作ってくれるご飯は、コンビニでもお惣菜でも、なんでも美味しい」
「オカンは昔からレトルトも上手いこと取り入れとったな、忙しいから」
守谷は朝、その同居の母に「デートするから夕飯は要らん」とだけ伝え、「楽してくれ」とばかりに夕食代の千円札を渡して出て来ている。
二人がたまにホテルへ行く時は大概この方式で、母は深く詮索せずに「はいはい、気にせず美味いもん食べてき」と送り出してくれる。
「みんなで食べたら美味しいやんな、」
「せやね、家族で、な、」
「うん?いる?」
頬杖をついて妻の顔をまじまじと見つめる夫の真意に気付かず、未来はフォークでハンバーグの最後のひと切れを差し出した。
「いらんいらん、食えって…ちゃんと肉付けな…」
「じぃと見てるから…」
「もぐもぐしてんのがかぃらしいなーいうて見てんねん」
ソースで濡れた唇、小動物のように小さく動く頬袋、「美味しい!」と感じた時に上下する眉、どれもこれも守谷にとっては愛おしい。
「恥ずかしなーもぅ…」
「ふー……ミラちゃん…食うたね?口拭き、ぼちぼち…行こか」
「うん…うん…」
前回ホテルへ行ったのは確かひと月半前、その時も守谷はなかなかに鼻息荒く未来をエスコートしたものだが、今夜の彼はそれに輪をかけて盛っていた。
「いつものホテルやで」
「うん、うん…」
「抱くで、がっつり」
「宣言せんとって…もぅ…」
ホテルへの道中、守谷は意気込みを未来へ話して聞かせ、並々ならぬ決意で臨んでいることを繰り返しアピールした。
「あー…ミラちゃん…ただでさえひと月半ぶりや、声出してエッチできんねん、ミラちゃん♡」
「そない嬉しいかな…」
「嬉しいよ、声我慢したらあかんからな」
家で声を押し殺して抱かれる妻もそそるが、やはり豪快に喘いでもらいたい気持ちが大きいのだ。
「無理やって…んー…」
「よし…着いた…ミラちゃん、どの部屋がええ?」
「どこでも一緒やんか……あ、あれ、あの和風なとこ」
部屋の看板を見ながら駐車場を1周、入ってすぐの和テイストの一室を未来は所望した。
「ほいほい……なんで?和風好き?」
「まだここ使ったことあれへんし…新婚旅行の時の部屋に似てる気がしてん…」
「あー、似てるかもな。ん、……そこ柱にドア当てんように気を付けてな…」
駐車スペースの横の扉から2階へ上がり、守谷は未来の手を取って部屋へと入る。
「わー…見て、ハルくん、畳!」
「ほんまや…旅館みたいやな」
テレビモニターのすぐ下には3畳ほどの小上がりがあって座布団に座卓、卓上にはリモコンと室内案内のファイルが置いてある。
「お泊まりしたら楽しそうやな…あ、」
はしゃぐ未来の後ろで守谷は前髪を崩してワイシャツをはだけ始め、
「うん…うん?聞いてるよ、」
と返した時の何もかも乱れた姿が堪らなく色っぽかった。
「いや…も、もう?」
「あんまし時間ないからね…さっとして終わり、じゃ寂しいやろ?スタートを早くしよかなと思うてね……ん、オレが脱がすからええよ、うん…あの時の旅館みたいか?」
「あ、んッ…♡」
ポチポチとワイシャツのボタンを外して覗いた小さな胸、守谷はキャミソールをずらして下着を確認する。
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