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2月・嫁が可愛いので激務も乗り越えられる
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しおりを挟む週明け、月曜日。
未来がメインレジへ立っていると、レジ裏の在庫置き場の確認をしに来た奈々が彼女へ声を掛ける。
「守谷さん、金曜はごめんなさい。旦那さんを遅くに帰してしまって…」
奈々は都会的な標準語で、人様の亭主とよろしくしていたことを詫びた。
「いえいえ、仕事ですから…」
「そうなの、つい話が弾んじゃって…タクシーで帰るつもりだったんだけどご厚意で家まで送っていただいて…夕食も作ってらしたでしょうに…ごめんなさいね、」
「いえ、翌朝ちゃんと食べてくれたんで無駄にもなってへんし、大丈夫ですー」
これはもしかして何らかのアピールをされている?未来は初めての経験に戸惑いながらも妻の余裕を醸した。
「それなら良かったわァ、では失礼、」
「……」
奈々が売り場へ戻った後、2人の会話を黙って見ていたレジの吹竹愛花が固まったままの未来の肩に手を掛け現実へ引き戻す。
「ミライちゃん、戻っておいで、大丈夫?」
「んあ!………なぁ、さ、さっきの何やの?マウントってヤツやろか?なんや…ええ感じせえへんわ…」
未来が上司に対して出来る範囲で最大の嫌悪感を表している、愛花はその気持ちを汲んでうんうんと頷き、
「言葉自体はまともだったよ?」
とあくまで中立な立場で返した。
「せやろか…『話が弾んで』って、ハルくんと同じ事言うて…アリバイ工作やろか…ほんまはホテルとか行って…あばばば…」
「落ち着いて、ミライちゃん。お客様が見てる」
「はっ」
夫に聞いて素直に答えてくれるだろうか、疑うことで機嫌を損ねたりしないだろうか。
未来は視界に入る奈々の後ろ姿を憎々しい目で睨んでは、ちょろちょろと訪れる買い物客の会計を捌いていく。
・
さて本社での研修合宿は先月末の金曜日にもろに被っていて、先週の金曜も飛び、珍しく3週分も夫妻はセックスをしていない。
次はこの週末、しかし未来は夫からの誘いがあっても断るつもりでいる。
それは午前様がやはり不愉快だったことに加えて、奈々を送って行ったのが不愉快だったこと、そして未来の妊活に一筋の光…生理が予定日より2週間以上遅れているから、妊娠した可能性があるからであった。
早めに検査薬を使っても良いのだがこれまでぬか喜びも数回してきた。
生理が止まってひと月くらいは待ってみたいと未来は少々勿体ぶっている。
今週は渋ってスキンシップを断り、来週末に陽性の検査薬を見せて夫婦で喜びを分かち合いたい。
それくらいしなければ朝帰り問題は未来の中で消化しきれない問題となっていた。
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