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11月・嫁が可愛いので喧嘩も利用する
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しおりを挟むそれから数回の夕食会を経て、未来が中3の秋に守谷がある提案をする。
「ミラちゃん、春からうちに住まへんか?すぐにでもええ、うちから学校通えよ」
進路を決める時期を控え、もちろん教師である母と話し合ってのことだった。
元々は遠縁だし、施設に説明するにも問題ないだろうと母の発案である…遠縁と言っても、母の従兄弟の嫁の義理の姉妹…とからしいが。
18歳になれば施設から独り立ちしなければならないし、既に中井家は人手に渡っている。
春から妹は家を出る予定で部屋は空くし、守谷の母は未来さえ良ければ、と自宅に住むように持ちかけた。
久々に触れた家族の温もりは今更離れ難く、未来は二つ返事で申し出を受け入れたのだった。
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また、進学は諦めて自立のために就職するつもりだった未来を説得したのも守谷だった。
「ミラちゃん、高校だけは出とったほうがええよ、将来何か資格とか取りたいときに制限がかかってまう。働くにも高卒がハードルになるし。夜間でも通信でもええから、行ってくれ、頼む」
「…なんでハルくんが頼むんよ…」
「保護者やから。国道沿いのムラタあるやろ、ここらのムラタの本店。昼間のアルバイト探してるから紹介しよう思うてんけど、どうやろ?家からはまぁまぁ距離あるけど学校から近いし、夕方から学校やっても時間帯も融通効くと思う」
「ハルくんと同じとこやないん?」
「んー、オレとこは人手は足りてんのよ。オレもいずれそっち巡店するやろうけど…」
この頃、守谷は市内の他店舗に勤めていた。
「ほな、そこで待ってる」
「分かった、高校生の枠で入るから来年からな…履歴書作る頃までには髪色直そな」
「うん……」
その後すぐに未来はプリンになった髪色を地毛より黒く染め直し、次の夕食会には守谷からお褒めの言葉をいただけた。
同居に関しては守谷の母の社会的地位が効いたようで、問題なく翌月には施設から退所でき、晴れて未来は守谷家の一員になれたのだった。
冬を越して次の春、未来は定時制の高校生になり、昼間はムラタのアルバイトとして働き始める。
守谷妹の高校の制服を借りて入学記念の写真も撮り、初々しくあどけない未来は可愛らしく、しばらくするとあからさまに守谷に好意を示すようになっていた。
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