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10月・おまけ
家族でお風呂・後編
しおりを挟む「……あぁそう、」
その目は嫌いじゃない、守谷はスススとワニの様に嫁に近付いて両手で小さな胸の突先を摘んだ。
「ぎゃっ!」
「不貞腐れんな、おい…乳吸うで」
「嫌やっ…ちょ、ん♡~」
飛沫と音が立ちやがて静かになって、浴室には小さな小さな未来の喘ぎ声が反響する。
「何シてんの、風呂やでッ……ぁ♡噛…ふぁ…」
「んム♡いけない感じがええな、ん♡」
真っ赤な顔をして、それでも夫が吸いやすい様に湯船から胸部を浮かせ…そこをちゅうちゅうと舐る夫と目線を合わせて短髪の頭を撫でれば、眉と目の形だけでも分かる、今夫は笑っている。
「お母さんはまだ元気やし、今のうちに稼いで…ん♡何かあった時に備えっ…ふ♡もう、話を…パパ、」
「春馬や」
「ハルくん、真面目に…も、あ♡♡」
「美味し、ミラちゃんのちっぱい」
「一言多いねん…ンっ♡も…」
そこに、廊下の先から2人分の足音がして、開きっぱなしなのだろう脱衣所の扉を守谷母がノックした。
「春馬、あんたミラちゃん泣かしてんの?いっくんが飛んで来てんけど!」
息子が走ってからの時間を考えると、おそらく体を拭かせてパジャマを着せて、諸々済ましてから様子を見に来てくれたのだろう。
長い付き合いのミライだから、守谷母の様子からそれほど緊急性は感じてないように思えた。
しかし守谷は悪戯が見つかった子供のように母のまぁまぁな剣幕に慄き、ちょいちょいと合図して未来に答えさせる。
「いや、何でもないねん、お母さん。仕事の話でちょっと言い合って…しもて、仲直りしたッ…カラ、大丈夫…もうぼちぼち出ル、から…」
揉まれ吸われ噛まれ、未来が辿々しく言葉を伝えると守谷母は
「そう?ならええけど…春馬、ミラちゃん虐めなや、んでのぼせる前に上がりや、……いっくん、牛乳飲も、」
と扉を閉めて息子を連れて台所へ戻って行った。
「アホちゃう…ハルくん…もぅやめて、」
「ん、しるしだけ、ん♡」
それは仲直りと、この女が自分のものであるという証明。
守谷は左右の胸にひとつずつ濃いキスマークを刻んで浴槽から上がる。
「恥ず…」
その後を追って脱衣所に出れば、一番のお気に入りのバスタオルを手渡されて未来の口角も久々に上向きになった。
「ミラちゃん、どう説得されても一緒や。仕事は今のまま。2人目がどうなるかは分からんけど、いっくんが小学生になった時に家におってほしいねん。帰宅時間に間に合う勤務に減らしてもらう予定やし、オカンもおるけど…出かけたりするやんか。オレも妹も…学童で日が暮れるまで預けられとったからや、いっくんに同じ目に遭わせたないねん、分かるやろ」
「うん…」
「いや、困窮してんならガンガン働いてもらうけどや…そんなでもないし…仕事は年取ってもできるけどな、子作りは今しか出来へんし…分かった?」
「うん、分かった」
「頭ごなしに否定して悪かった。ミラちゃんは仕事出来んねんから、そこは認めてるからな」
「うん」
「家に要らんストレス持ち込んで欲しないねん、いや、正社員で産休育休使ってバリバリしてる人はおるし凄いと思うけどな、契約社員とは福利厚生がちゃうから。契約はボーナスも」
「わかったて」
未来は夫が喋っている間にしっかりパジャマまで着て歯ブラシに手を掛けていた。
「さよか…うん、」
「うちも…家に帰って母親がおってくれたら…嬉しかったと思うわ」
「せやろ、うん…あんま考えんとき。ゆっくりな、とりあえず子作りな、ミラちゃん♡明日の夜な♡」
汗だくの守谷は肌着とパンツだけで脱衣所を出て、その後台所からは息子を叱る母親の怒声が聞こえてくる。
平和な、家族の姿…身に余るこの幸せに慣れて麻痺してしまいたくない…未来は本音を隠しつつ、口を濯いで皆の元へ足を進めるのだった。
そして翌日の夜。
「ママ、ここどしてん?赤いよ」
「へ?あ……悪い虫に噛まれてん、うん…」
体を洗っていた未来は息子に指された胸のアザ、夫が作った内出血の痕を恥ずかしそうに撫でた。
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