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10月・おまけ

ミライのハロウィン準備

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 10月初旬。

「あ、もしもし?久しぶり、いや、元気よ、うん、……うん……へぇ、うん…はぁー………そら…、あぁ、せや、しゅーちゃん、ツナギ持ってへん?昔の、使ってたやつ…捨てずに取ってたの見たことあんねんけど……倉庫?うわぁ、さすがや、ちょっと借りるわ。ちゃうよ、うちレジ係やもん、じゃなくてぇ、ハロウィンで使うねん」

 未来みらいは電話を切り、サンダルを引っ掛けて庭へ出た。

 電話の相手は夫の妹、未来の義妹…なのだが4歳年上である。

 その義妹に何の用かというと、彼女が昔学校やアルバイトで使っていた作業着、ツナギをまだ所持しているかの確認であった。


 ハロウィンの仮装にはあれくらいが丁度いいと踏んでかけてみたのだが、十ウン年も昔の作業着は今も守谷家の庭のプレハブ倉庫に眠っていた。

「これか…ム……あ、中はキレイ…陰干ししよか…重いな…」

義妹が学生時代から何着も着潰して、しかし何かに使うかもと捨てずに取っておいたのは守谷兄妹の母・未来の義母である。

 作業着は段ボール箱に5着は詰まっていて、蓋を開ければむあっと油の匂いがした。

「まぁまぁやな…うん、これにしよ」

未来はとりわけ汚れの少ないものを選んで母屋に戻る。



「ちょっと大きいか…しゅーちゃん背ぇ高いもんな…」

持ち帰ったツナギを、寝室の姿見の前で自身の体に合わせてみる。

 義妹は兄ほどではないが女性としては長身な方で、160センチの未来ではその袖と裾が少し余るくらいだった。

 袖を通して少し捲って、胸元は開いて…今更ながら凹凸の少ない体を映した姿見に向かって、未来は不満げにため息を吐く。

「嫌やわ…パッド入れたろか…いやバレバレなんは恥ずいか…」

せめて日本人平均くらいのサイズは欲しかった…これは思春期の頃から常々思っていた。

 どんなに食べても胸に肉が付かない、それなのに痩せる時は胸周りから落ちる。

 本気で豊胸手術も検討してしまうくらいには悩んだ時期があったのだ。

 サプリメントや飴も買ったし、マッサージジェルも使った、しかし何ら変化は無かった。

「ええねん…貧乳も…チャームポイントやん…うん…」

そう自分に言い聞かせて試着を終える。





「ミラちゃんはハロウィンの仮装は何にすんの?」

帰宅した夫が夕飯をもしゃもしゃと食べながら妻へ尋ねる。

「ん、しゅーちゃんのツナギ借りて、ヤンキーみたいにしたろ思てんねん。サラシみたいなん巻いてな、こう…」

「それやったらここ開けるってことか?」

「せやね、もちろんキャミみたいなん中に着るけど…」

「鎖骨見えるやん。あんま肌見せなや…ミラちゃんはそこら辺キレイなんやから…」

主人とはそっちの方は数ヶ月めっきりだが、ちょいとした性的なアプローチはしてくれるので未来は気を抜かず体型を保てている。

「中に着るて…」

「重ね着し、いや、喉元までぴっちり止めや、」

「そんなんギャルちゃうやん…」

「ギャルの整備士かて居るわい。な、肌見せは許さん」

ちなみに大量の作業着を着潰した義妹は自動車整備士である。


 決して露出がしたいわけではない、未来は他の女性陣がするように非日常を仮装で楽しみたいだけなのだ。

「嫌や、……ハルくん、うちのギャルコス…見たない?」

「見たいよ、いや、オレが常時見られへんもんを他の男も居るとこで見せんでも」

「あかん?」

「いや、」

夫は気丈な妻の普段見せない作為的な上目遣いにめっぽう弱かった。

「長袖、長ズボンやで?うちかて中学ん時はツナギ着て働いとったもん、普段使いやのうて、コスプレしたいねん、な?」

「そんなんコスプレ言うくらいならもっと着て欲しいもん有んで…」

それはヒラヒラのエプロンだったり可愛らしいメイドワンピースだったりするのだが、夫はぐっと明かすのを堪える。

「ハルくん、いつまで保護者気分やの」

「夫気分や、……いや気分ちゃう、夫やん…………ム」

 茄子の揚げ浸しの油で濡れた唇に未来は唇を重ね、夫を黙らせてから

「好きに着るから♡おやすみ、」

と息子が眠る寝室へ上がって行った。

「ミラちゃん…………あーーもう、勃ってもうたやんか…」


 軽いキス程度でも勃起してしまうほどに飢えた守谷…性欲スイッチを入れられた夫は行き場のない滾りを鎮めるべく、この後書斎にて独り励むのであった…。
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