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11月・おまけ
ミライの実地調査
しおりを挟む11月下旬のある日。
子供は保育園、義母は外出中、未来は夫のオーディオルームでとあるDVDをレコーダーへセットした。
「吐いたらどないしよ…」
それは夫の秘蔵のアダルトビデオで、レンタルではなく購入したお宝…嫁に激似(夫談)の女優の作品である。
ジャンルは『若妻』、華奢だがむっちりボディの幼妻があらゆる手で旦那へ奉仕する、可愛く上目遣いでおねだりする、子種を欲しがる…といったプレイ内容で、夫のお気に入りらしいのだ。
未来は夫以外の男性の裸体にはひどく抵抗があるのだが、どうやらこれはそれが最低限しか映り込まない、「主観もの」であることを何となく把握している。
視聴する男性があたかも女優とシているような…サレているような視点・感覚で楽しめるもの、そういった類の物であるらしい。
「……ふー…」
夫が「観てもいい」と言うから実行したものの、直前になって未来は怖気付いていた。
観たからといって女の自分が興奮するわけでもないし、他人の情事を覗くようで気が引けるし…なにより気持ちが悪いのだ。
ディスクの再生が始まり、薄着にエプロンでるんるんとモップで部屋の掃除をする女優が映し出される。
「こんな格好で掃除すんの…?……そんなに…似てるか…?」
夫がこの女優を気に入っている理由、それは自分に似ているからと言うがそうでもないと思うし、その言葉が嫌味に感じるほど体格に差があるし。
『ねぇアナタ…床を拭くから…前ごめんなさーい、もぉ♡そんなに見ないで、恥ずかしい♡』
視界を埋めるのはふりふりと揺れるエプロンの裾から覗く大きく丸い尻、掃除中の若妻を凝視する夫の視点描写なのだろう。
『きゃあっ、あ、ダメ…まだお昼なのに…あん♡』
棒芝居が気にはなるがいきなり始まるらしい、未来は眉をしかめリモコンを手に持ったまま待機する。
むっちりとした体、派手な喘ぎ声、何が自分に似ているものかとこのチャプターをスキップした。
「うげ」
フェラチオはモザイクといえども見たくない、飛ばす。
「近所迷惑やん」
縁側を開放しての半青姦も飛ばす。
『アナタ、いいでしょ…?アナタの子ども…欲しいの…』
作品も終盤、子作りセックスのシーンで未来はついリモコンのボタンから指を離した。
「やっぱ後ろから…?」
彼女は夫が以前言った、「後背位は子作りの体位」という言葉を鵜呑みにしてしまっている。
しかし画面の女優はしっかりとこちら…夫の視界にその表情が見えるように正常位で豊満な乳を揺らし、美しい顔を歪めて鳴く。
「………」
生唾を呑み込む振動が鼻の奥から耳へ伝わる。
自分のセックス中の顔なんて見る機会は無いのだが、どことなく…泣きそうになる寸前の表情が自身のそれに似ているかも、と未来は感じた。
『あん…いっぱい出てる♡アナタ…んっ♡』
・
「終わった…」
終始ラブラブな展開で、未来が危惧していた男性の裸体はほぼほぼ映らなかった。
人道に反する様なプレイも無かったしなんとか飛ばしながら観れるものだった。
「うーん…ハルくんはこれがええんかぁ…」
観ていいとは言われたが観たことは内緒にしておきたい…未来は元通りにディスクとテレビ周りを直してオーディオルームを後にする。
「うちから…誘う……何て言う…?」
未来は洗面所を掃除しながら表情筋を動かして百面相をしてみる。
喜ぶ顔、悲しい顔、うっとりする顔、イく時の顔…あの女優の姿がチラついて同化し、なんともいやらしい気持ちになって仕方ない。
「ハルくん…シよう?………うーん…」
文句はさておき、未来はこの月末の金曜日に自分から夫を誘うと決めた。
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