君の望む僕に、なろうと努力はしますけども。

24（最終話）

　それから二人はゆるゆると過ごし、昼前にはお互い尻に軟膏を塗り合った。

「あー、痛い…キミちゃん大っきいから」

「皮肉キツいですよ……い、ったぁ…」

「ベタベタするね…にしても準備しといて良かったー、薬」

「周到なんですから…僕も用意はしてましたけど…いてて」


　この痔の薬はどちらのために買っておいたのだろう、いずれにしてもこの入念さと抜かりの無さに公親はパートナーへ惚れ直す。

　いい加減そうに見えるがそれはきっとキャラクター作りなのでは、公親を動かすために戯おどけて見せているのでは。

　龍進は学力も悪くないし、いつ訪ねても部屋は綺麗だし自炊もしているしデキる男だ。

　公親を引き立てるために道化を演じているのならそれは大したもので、むしろ龍進の方が狡猾でダークなのではなんて公親はそら恐ろしい気分になる。

「（どっちにしても、僕は踊らされてるんですから…龍くんの勝ちなんですよね）」

「なーに？」

「いいえ…ねぇ、龍くん…僕、頑張りますから…また抱かせて下さいね」

「え、大丈夫？うれしーけど…なら俺も、また抱かせてくれる？」

「もちろん…今度は、龍くんもしっかり主導権を握って下さいね」


　薬のチューブを持ったまま、朝日の中で二人の影が重なる。

　昨夜のような荒い吐息が止む頃には、手の中から薬は床にポテっと落ちていた。

「キスが牛丼味だね」

「そうですね、ここはどうでしょうか？」

「美味しーかもよ、試してみ♡」


　これまでと変わらない、しかし刺激と期待がプラスされた日常が始まる。

　上になって、下になって、対等で時に虐しいたげて。

　遠慮がちな上目遣い、けれどテクニカルな舌遣い。

　十年来の友人でも未知の部分、あの頃には想像できなかった未来。



　そして、数日後。

　もう既にここは公親の家でもあり、二人の愛の巣でもあった。

　コンディションが万全になった公親は、パートナーも同じく傷が癒えたと想定し誘いを掛ける。


　全身を存分に味わった唇で、口付けて…

「まずは僕から、リベンジ良いでしょうか」

龍進好みの意地悪そうな顔を繕つくろって、男は恋人を押し倒すのだった。



おわり