君の望む僕に、なろうと努力はしますけども。

19

　シャワーを浴びて、ヒゲを剃って、二人は遠足の小学生みたいに片方の後を追う。

「うどんとか」

「朝バーガーは？」

「持ち帰ってうちで食べましょうか」

「んー……あ、これキミちゃんのシャツだった。ハイ」

「ありがとうございます」


　脱ぎ散らかされた昨夜の残骸には、焦燥が感じられる。

　靴下も裏返しで、それ以前に靴だって揃えられていない。


「ネクタイ、結んでやろーか？」

「間に合ってます」

「そう？俺、営業するようになって、身だしなみも考えるようになったわ」

「見られますものね…龍くん、スマホ忘れてます」

「おー、いっけね、ありがと」


　ホテル代は割り勘だが、公親が立て替えてカードで支払った。

　部屋を出るのも公親が先、龍進は後ろをゆったり大きな歩幅でついて出る。

　龍進にしてみれば、実は公親を押し倒して襲うことなど造作ない。

　綺麗な顔に色気を感じるし、興奮するには充分に魅力を感じている。

　しかし公親を男性として慕ってもいるので、簡単にメス扱いし抱くことは出来なかった。

「（攻めとして、育てたいってのもあるけど…俺が抱く割合が増えんのかなー…難しー）」

　この遠慮を「侮り」と思われては敵わない。

　公親を優先させることが龍進の思いやりであり彼の騎士道なのだ。

　願わくば公親が立派な攻めになりますように、キャラクターと中身の隔りに龍進は奥歯を噛んでモヤモヤを紛らわす。

　いつか荒々しく抱いてくれたら良いのにな、秘密でもない希望を胸に公親に追い付いた。