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しおりを挟む話が深みにハマりそうで宗近さんがスタッフにお冷を頼んだ時、
『♪~♪~』
彼女のスマートフォンが鞄の中でけたたましく鳴り出す。
「なんだろ…すみません、」
「ん、」
俺は手で「どうぞ」とジェスチャーして、席に届いた氷水のグラスを手前に寄せた。
「もしもし、えぇ、言ってた慰労会で……………私は呑んでません……はい、………そりゃいますけど、浮気はしません、私をそんな目でみる奇特な方はいらっしゃいません、」
電話の向こうはおそらく恋人なのだろう。
グラス越しにあたふたする宗近さんを眺めて微笑ましく見守る。
彼女は自己評価が低く謙遜が過ぎるので自分を低く表現しがちだが、見た目は並みに可愛いし胸は大きいしで隣接のロビーで仕事をする配送スタッフの間では隠れた人気者であった。
「……違う、……だってそうじゃないですか、もう……え?えー……いません、変な方はいません、信頼の置ける方々ばかりですから、えぇ、………馬鹿なんですか………はいごめんなさい、今度から、えぇ、はい、はーい………はぁ…すみません…疲れた…」
「はは、彼氏?」
「はい……浮気してないかって…しませんよ、もう…」
そう憤慨する宗近さんは首を真っ赤にしてうっすら汗をかき、ぱたぱたと手で仰いでウーロン茶を呷る。
「…けっこう束縛系?」
「いいえ、普段は全然…なんでしょう、自分がヒマだからちょっかい出して来るんですよ…酔ってるみたいでした」
「ん、ええやんか、気にかけてくれてんねんから…せやろなぁ、ムラタは男女比が偏ってるから…彼氏からしたら心配になるんも当然やね」
「そうでしょうか…まぁ…確かに、みんな仲は良いですよね」
ムラタは男社会、商品知識さえあれば理系文系などは関係無いのだが、不定休シフト制という勤務体系からいっても子育て世代の女性が少なく男性が圧倒的に多くを占めている。
そして営業を生業とするのだから総じて話も上手く社交的、彼女のように人見知りの者も中にはいるが、本性を隠してスイッチングできる能力を持つ者も多い。
「横の繋がりがあるからな、同期は大切にするし…社内結婚も多いしな」
「……そういや芳井さん、前に合コンも行ってましたよね、女の人相手の」
「うん、前はね。いっとき…片塚と同居しながら気持ちは離れてた時かな…マジで婚活したろ思うて。それはそれで楽しかったよ、女の人はええ匂いするしキレイやし。でもなんや…楽な方に流れてまうね、機嫌とったり尽くしたりさ、女の人とイチから恋愛すんのダルなって、それが最後やったね…んで家に帰ると片塚がええ仕事すんねん、『お風呂沸いてるよ』とか言うて、ええ女房やねん…」
「…へぇ」
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