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「前向きに考えてくれてるのね、やっぱり適役よ、ありがとう」

「…しかしその、見返りとかは」

「何が良いかしら?金銭だと売春になるかしらね」

「その…で、デートとか」

「あら、そんなことで良いの?」

傾げた首に沿って、黒髪が波打つ。


 先輩は学生らしいフレッシュなお出かけを想像しているのだろうが、その価値観が全ての男に通用するとは思わない方が良い。

 なんせゴールが棒を見せることなんだから、勢いに任せて最後までしてしまうかもしれない。

 一筆書かせておいて僕が御用になったとしても、先輩の処女は戻って来ないし負担も大きいだろう。

「いえ、その、デートして、きちんと関係性を…あーもう、僕は、正直言うと西御門先輩のことがうっすら好きでした。週に1回会うだけの仲ですけどね、知的で可愛らしくて好きでした。何もする気はありませんでしたけど、こういうチャンスがあるなら…この機会に僕と交際してくれたら…抵抗無く棒を見せられるのではないかと」

「つまり、交際せねば棒を見せてくれないということね?」

「だーっもう、先輩を人質にしたい訳ではありません!棒を見たいからって理由で交際をOKされるのも嫌です!少なからず僕のことを想って下さってるなら、で、出来れば交際したいなと…思った次第であります…」

言葉の堅苦しさが僕にもうつって変な感じだ。

 頼み事をしてきたのは先輩の方なのに僕が下手に出るのはどうもおかしい。

 でも雰囲気イケメンだろうが僕のことは悪くは思われてないのだ。

 何となくでも型にはめてしまえばカップル成立だ。


 しかしこんな極端な考えをする女性を恋人にして良いもんかね、脳内で冷静な僕が待ったをかけた。

 先輩のイメージは崩れたし下品な物言いも見られるし変わってないのはその麗しい見た目だけ…白い頬を染めもせずに棒を連呼するんだからキスしても照れもしない可能性さえある。


 提案したものの取り下げようかな、内なる僕と葛藤していると先輩は

「良いわ、お付き合いしましょう、笛田くん」

と涙袋をぷっくり膨らませて笑った。

 今までで一番の可愛さに脳内僕もノックアウト、鼻血が吹き出そうなくらい顔がじんじん熱くなって目が渇くのが分かる。

「あ、はい…」

「私、男性と実のあるお付き合いをしたことが無いからこれも良い経験だと思うわ、あ、勘違いしないでね、棒を見るためではないわ。笛田くんなら…どんなことでもこうしてきちんと話をして前に進めると思ったの。顔も良いし嫌悪感は無いわ」

「…はい」

「笛田くんの困り顔、可愛くて好きよ」

「ぶへ」

 きゅっと上がる口角、下がる目尻、期待に輝く瞳…あぁ敵わない、美しい。

「私に嫌悪感が湧いたら遠慮なく言ってちょうだいね、私、割と素直で対人関係がポンコツなところがあるの。突発的な興味で笛田くんの精神まで巻き込んではいけないから」

「そんなこと…あるかも…まぁ、欲を言えばその…棒とかは言わないで欲しいです」

「……ペニ太郎とかにする?」

「追々考えましょう…とりあえず今日のところはここまでで…」

「分かったわ、…あ、そうだ……」
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