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しおりを挟むやさぐれているとさすがの速さで料理が届く。
「…頂きます。……別に、悠希斗くんとのキスのドキドキが嘘だって言いたい訳じゃないわ。あたかも悠希斗くんが初彼氏みたいな振る舞いに見せてしまったことを今さらだけどお詫びしたかったの」
「キスは慣れてた訳ですね」
「いいえ、1回だけ、それっきりよ」
「…でもその人とデートくらいしたでしょう?」
「それもいいえ。学校の行き帰りに会うくらいね。半年付き合ってやっとのキスよ」
「お誘いくらいあったでしょう?断ってたんですか?」
「放課後も土日も部活が忙しい人だったのよ。だから移動教室ですれ違った時に手を振るとか、テスト期間で部活が休みの時に登下校を共にするとか…正味月に数時間しか一緒に居なかったわね」
「なんかお相手が不憫だなぁ」
部活に熱心な校風だったのだろう。
確かにそんな学生生活の子もいて不思議はない。
しかし甘酸っぱいというか若々しい恋愛だったのだな、そんなに忙しいのに何故わざわざ彼女を作ったのかその彼に尋ねてみたいものだ。
ちなみに僕は同じ頃初めての彼女が出来たが照れと気まずさから接する機会が減り自然消滅した。
これに関しては自分でもよく分からない、もしかしたら夢だったのかなと友達に愚痴ったものだ。
「それも理解してると思ったんだけどね…まぁそれでキスして…春休みに入って、地元のショッピングモールのフードコート、たまたま友人と出掛けてたらそこに彼が部活の仲間たちと遊びに来てたの。挨拶しないのも変なのかと思って近付いたらね、どうやら恋バナをしてたみたいで…仕切りを隔てて隣の席で隠れて聞き耳を立てたら…彼は私のことを笑ってたの」
突如デミグラスの掛かった玉子の頂点に不作法にスプーンを突き刺して、先輩の顔から笑顔が消えた。
「…笑ってた?」
「えぇ。『半年付き合ってキスだけ、それで西御門さんは顔を真っ赤にして…』って。それぞれのメンバーの野次は言葉にしにくいんだけど、嘲笑よ、要はそんな事で照れた私を皆で囃して詰っていたの。私からしたら初めてのキスだったんだもの、照れて当たり前だと…そう思ったけど彼らからしたら違ったみたい。自分で言うのも変だけどね、『より良い女子を彼女にする』っていうのが彼らの中でステータスになってたみたいね。誰がいち早くセックスまで進むかゲームしてたみたいよ、他の子に悔しそうに『俺、やっとキスだぜ』って報告してた。盗み聞きした少しの時間でもそういったことが読み取れたわ、他校に彼女がいるみたいなことも分かったし…彼らのマネージャーともデキてるような、そんなことも文脈から分かった。私はお飾りの彼女で、彼の言葉を借りれば高嶺の花で、そんな私を恋人にした彼は男子の中では一目置かれる存在で……馬鹿馬鹿しくって…でも涙が止まらなかった」
「……」
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