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しおりを挟む「嫌です」と即答しないんだから先輩は内心喜んでいるだろうか。
それとも他の候補の選定に入っているだろうか。
僕はどちらかと言えば見せたって良いとまで思っている。
だけど「はい、ご覧下さい」なんて自信満々になれるほど開けっ広げな性格ではない。
そして見せてそれからどうするんだろう、そそくさと解散するのだろうか。
それとも雰囲気次第では「触りますか」なんつって「あら、硬いのね」とか言って「ほら、汁が出てきたでしょう?これは我慢汁と言って…」みたいなエロ漫画みたいなことになったりして。
「もちろんよ」
「(…変に期待するだけ無駄かな…)」
シンキングタイムは数分かかるとふんだ先輩は、白板に向き直り文庫本を取り出して栞の所を開く。
ブックカバーがはまり切らない分厚い辞書みたいな本は、妖怪とか怪異を題材にした小難しい小説らしい。
「…先輩、」
「なぁに?」
「…そもそもね、見せるって、ど、どういう感じで…その、ここで?」
「いいえ、できれば清潔にできて人が来ない所が良いでしょう?立位でも良いけれど座って落ち着いた方が良いかと思うし。私の家か、あるいは笛田くんのお家か」
「……なるほど」
じゃあラブホテルでも文句は言うまいね、僕は実家住まいだし先輩も隣市だが実家からの通いだと聞いている。
僕は先輩にスマートフォンを握らせていつでも通報できるようにするとか配慮をすべきなんだろう。
しかし同意してホテルに入室している時点で何を訴えられても僕が勝つ気はするが。
それか僕が棒を見せるだけで先輩に触りません襲いませんという旨を一筆認めてどこかに保管して、万が一何かあった時の保険とすべきか。
しかし全く可笑しな話だ、たかが棒を見せるだけでここまでの配慮が要るなんて。
僕がトイレで用を足している時に勝手に覗いてくれればバレても彼女が覗き犯になるだけで済むというのに。
「…先輩、僕がお手洗いで立って用を足すのを、先輩が横から見るというのはどうですか」
「……どこのトイレ?多目的トイレかしら」
「そうなりますかね、この時間なら学生もほとんど帰ってますし、運動部の部室棟でなければ多目的トイレは使用する人もいないかと」
「んー…それは…人道に反する気がするわ」
「どの口が言ってんすか」
もう心の声が口から出ていた。
先輩は肩を震わせて笑い、本に栞を挟んでぱたんと閉じ振り向いた。
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