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しおりを挟む「笛田くん、笛田くんは恋人にペニス、そうペニスを見せたことはあるかしら?」
才色兼備の通り名を欲しいままにする西御門先輩がまさか男性器を連呼するなんて。
想定外過ぎて僕は固まってしまう。
何かの間違いか寝ぼけているか泥酔しているかのいずれかの要因が考えられる。
あるいは噛んだか…言おうとしたのは例えば『ペンス』とか『テニス』とか『ベニス』とか。
僕はそのどれも縁が無かったので
「は?」
といささかぶっきらぼうに聞き返した。
「だから、笛田くんは、恋人なりセックスフレンドなりにペニスを見せたことはあるかしら?大人になってから」
残念だが聞き間違いではないようだ。
西御門先輩は肩に掛かったつやつやロングの黒髪をバサッと手で後ろへ払い除けて繰り返す。
「…質問の意図が分かりかねます」
「どうして?与えられた質問に事実を答えれば良いだけなのに。イエスかノーの2択でしょう?あ、50-50でもい」
「著しくパーソナルな情報を含むからですよ」
「そう、確かにね」
「……」
ここはどこかと言えば僕と先輩の通う大学の3号館の一室。
今はゼミの授業が終わって学友がパラパラと帰って行った後のいわゆる放課後である。
僕、笛田悠希斗は甕倉産業大学・通称『カメサン』の3年生、西御門巴先輩は次の春に卒業と就職を控えた4年生だ。
うちのゼミは2年生の夏休み明けから専攻分けをして冬に所属が決まるのだが、同じゼミ生となって1年一緒にいさせてもらったがまさかこんなぶっ飛んだ質問をする女性だとは思っていなかった。
先輩は容姿端麗な優等生タイプ、お淑やかだけれど明るくて快活で、ハッキリとした物言いをする人だ。
いつもすっぴんで気取っていなくて、けれど気品が漏れ出たようなオーラを纏った『難攻不落』なマドンナなのである。
対する僕はまぁ皆勤賞くらいしか誇るところが無いような普通の学生、奥二重で左目尻の下にホクロがあって、街に投げ込めば上手く溶け込めるような程よく流行りを取り入れては乗り換える普通の若者だ。
夏はツーブロックにしていたけど今は伸ばしてゆるふわな感じ、就活前に遊んでおこうとアッシュグレーを入れたばかりであった。
「(恋人はともかくセフレを持つような男だと思われているのか、僕は…何の質問かと思えば…)」
一応授業が終わってから前の席の先輩が僕に振り返り、「ちょっと良いかしら?」と断りを入れてからのあの質問ではあったが。
完全に想定外、むしろ予測できる人間はいなかったことだろう。
「では…私がこの質問をした経緯からお話するわね」
「はぁ」
先輩はイスを回して僕にきちんと正対して話を始める。
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