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貴方は浸りたいだけ
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しおりを挟む「…あのさ、前も言ったけど、こういうの、もうやめない?」
剥いてもらったハンバーガーを、半分包み直して持ち上げる。
造作もない、簡単なことだ。
私の右手は動くのだから。
「ん?何が?」
「私を過剰に甘やかすというか…妄想し過ぎなんだよ」
「そうかな、ハンディキャップがあるんだから配慮してるだけだよ」
そう来たか、社会的な正論っぽくてポカンとなってしまう。
「……ハンデなんて持ってない。私は貴方と変わらないよ」
「いやいや、前向きなのは良いことだけど、自身を受け入れなきゃ」
「前向きも何も、私は普通にこの手を動かして生きてるよ。働いてるし」
「ミキ、そりゃあ認めたくないんだろうけど、優遇されてるんだからハンデは隠しちゃダメだよ」
「…はぁ?」
どういうことだろう、彼に対して見せたことのない目を向けてしまった。
彼は自分のハンバーガーを齧り、
「ミキは障害者枠での雇用でしょ?それを健常者ですって主張したらおかしなことにならない?」
とジュースのストローに吸い付く。
一定数以上の従業員数を有する事業者には、割合に応じて障害者を雇用しなければならないという制度がある。
能力が伴っていれば一般枠の社員と同じ業務がさせてもらえるし、不当に給与が下がるなんてことも無い。
もちろん技能・状態によって仕事の幅に制限はあると思うが、適材適所で振り分けて働けるように定めてある制度だ。
私の部署にも身障者の社員がいるが、パソコン操作も喋りも問題ないから何のしがらみも無く働けている。
段差や扉の行き交いに配慮は必要だが、ただそれだけのことだし困ったことなど無い。
だから障害者雇用枠に関しては全くと言って良いほど無意識というか気にしていなかったのだが…コウタは私もそうだと思い込んでいたようだ。
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