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貴方は浸りたいだけ

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 私はミキ、28歳の会社員だ。

 大手量販店の本社の事務として働いている。

 仕事はやり甲斐があって人間関係もおおむね良好、昇給も順調だし豊かで快適な生活が出来ていると思う。

 私生活では彼氏もおりハッピーな毎日…と言いたいのだが、そうでもなくなってきた。


「ミキ、大丈夫?座れる?疲れてない?」

「…ありがと、大丈夫だよ」

私は彼氏が引いてくれた椅子に腰を降ろす。

 見届けた彼氏は満足げに笑んで、自分の椅子に座った。


 彼はコウタ、35歳。

 保険関係の仕事をしており、我々は交際して6ヶ月ほどのカップルである。


「はい、大丈夫かな?開けてあげるね」

「いや、大丈夫よ」

「遠慮しないで、……はい、召し上がれ」

 場所はファーストフード店、そこそこ広いフロアのほぼ中央。

 彼は私の分のハンバーガーの包みを、ご丁寧に開けてくれたところだ。

「…ありがと」

「どういたしまして、もっと頼って良いんだからね」

「……」


 ジェントル、ではない。

 過保護、も少し違う。

 彼は、私の世話をやき優しくすることで自分を大きく見せているのだ。

 体ではなく心を、だ。
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