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何でも話せる、それは彼女じゃなきゃだめ?

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 彼は何か言いたげだが口を噤んで、そそくさと荷物をまとめ出す。

「……心の狭い女」

「何でも良いよ。次はそれを許してくれる心の広い子と付き合いなよ」

「…本当に良いんだな?」

「良いよ。出て行って、私物は後で宅配便で送ってあげるから」


 未練なんて無い。

 清々している。

 むしろここまで私が嫌がる事をしておいて、どうして彼の方に選択権があると思うのか。

 蹴り出さないだけ有り難く思って欲しいくらいだ。


「…マジで…浮気とかはしてねぇから」

彼はスニーカーを履いて、少し振り向いてそう呟いた。

「うん、何でも良いよ」

「信じろよ」

「どうでも良いんだって」

「…簡単に突き放すんだな、俺のことそこまで好きじゃなかったんだろ」


 宇宙人と交信している気分だ。

 言動不一致とはこのことか。

「…はぁ?好きだから、他の人と話してるのが嫌だって言ってるじゃん。それを言っても止めてくれなかったよね、って。そっちこそ、私のことそこまで好きじゃなかったんでしょ」

「んなこと、ねぇよ…でも人に頼られたら嬉しいじゃんか、そういうの好きだし、」

弱々しい声で、彼の広い背中が揺れる。

 泣いているのか、いまさら。

「え、もしかして好きな子を虐めるみたいなことをしてたの?」

「……だって、ヤキモチ、妬いてくれたら…嬉しいから…」


 「キミ、何歳でちゅか?」と尋ねて煽ってやりたかったが、逆上されても怖いのでやめた。

 サクッと論破みたいなことをしても良いけれど、痴情のもつれで傷を負うのは勘弁である。

 もうこの人との間に信頼は無いのだ。

 ニュースにして欲しくないし、殺されて愛の深さを示されても浮かばれない。


 人の悩みに寄り添える優しい人だった。

 それが可愛い子に頼られて良い気になった。

 面白くない顔をする私に優越感を覚え、すがられるよう上に立とうとした。

 慣れへのちょっとしたスパイスのつもりだったのかもしれないが、私にはそんなものは不要だった。


「さようなら」
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