真梨亜さんは男の趣味が残念だ

エピローグ

88きゅん

　最近ではセックスしながら会話して効率的な時間の使い方をしたりもするがいかんせんムードに欠ける。

　ふと納期遅れ案件を思い出して「また先方に連絡入れなきゃな」なんて邪念を抱きつつ彼女を責めるのが本当に口惜しい。

　まぁそう悩んでいるのは僕だけみたいで、それ専用に設しつらえられた綺麗な部屋で気兼ねなく楽しめるとあって彼女はそこそこ満喫しているようだが。

「緊張？今さら？」

「うん…ただ食べに行くのとはわけが違うよ」


　さて明日、僕は彼女の家へ行きご両親へ挨拶をせねばならない。

　いわゆる「お嬢さんを僕に下さい」というやつだ。

　そんなことを言わずとも交際は公認だし知れた仲なのだけれど万が一にも反対されたらと思うと胃がキリキリと痛む。

「礼央れお情報によると、papaパパはdumbbellダンベルでpump upパンプアップしてるって」

「それ、僕殴られるのかな」

「大丈夫だと思うけど…mamaママもそれに付き合ってるって」

「…お母さんは本気で闘いを挑んで来そうで恐いな…」

　元海兵のお母さんは以前僕と闘いたいと言っていた。

　ただのアメリカンジョークだと思いたいけどそうじゃなかった時が困る。

　なんせ僕は自分より体の小さな相手に本気を出せない。

　それで競技柔道から足を洗ったのだからお母さん相手にだって同じことだ。

　しかし「Mariaマリアが欲しければ私を倒しなさい」なんて…言わないよな、でも妙なノリをするご家族だからそんなサプライズがあるかもしれない。


「負けちゃう？」

「いや、んー…女性に本気出せないからな…負けるかな」

「もし襲われても逃げてね、組み合っちゃダメよ」

「それは心配？それとも嫉妬？」

「どっちも‼︎」

実の母だってライバル視する可愛い彼女はぷぅと頬を膨らませ、今夜のために準備したというベビードールとやらに豊満な体を収めた。

　いつ見たってダイナマイトバディーだな。

　ひとり暮らしを始めて少し痩せたらしいが胸の肉は落ちなかったみたいだ。

　彼女が僕を好いてくれること自体が未だに信じられないというのにそれを好きにして良いなんて。

　全く一生どころか来世分の運も使い果たしてしまったような気がしている。


「大輝くん？疲れた？」

「ううん、それ可愛いね」

「えへ…ありがと…大輝くん、coolクールなのより女の子っぽいのが好きかなって思って、pinkピンクにしたの」

「真梨亜さんは何色でも似合うよ」

「きゅん」


　形だけで衣類の体ていを成さないベビードールの裾を捲まくって張りのある肌に唇を付けて僕は

「真梨亜、次はどんな体位にする？」

と囁き…緊張もストレスもまさに発散とばかりに朝まで彼女を抱き倒した。