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16章
76きゅん
しおりを挟む『嫌がられたら悲しいからさ』
『そうだろうけど、もっとしてやりたい、困らせたい、とか思わない?』
『嫌がってる風に見えると優しくしなきゃ、やめなきゃって思っちゃう』
フリック入力が面倒になった礼央は大きなため息をついて、
「はぁー…あのさ、可愛い可愛い彼女でしょ?もっともっとシたくないの?」
と直接斬り込む。
「……」
「全部自分のものにしたいって思わない?滅茶苦茶にしたいとか、汚したいとか、泣かせたいとか、乱れさせたいとか…支配したい、自分のせいで感情が動いてるところを見てみたいと思わない?」
「思うけど…嫌がられるだろうから自制してるんだよ」
「あっそう…あのね、女の子にだって性欲はあるんだよ。奪われたい願望を持ってる子だっている。姉さんがそうだって言ってる訳じゃないよ、でも良い子ちゃんな優しいsexでは物足りないって思ってる…可能性もあるでしょう?もっと回数を増やしたいとか思ってるかもしれない…月1は少ないよ」
回りくどく言っても伝わらない。
礼央は後で怒られることを承知で姉からの相談内容を漏らしてコーヒーのストローに吸い付いた。
性事情を明かされた大輝も動揺して、瞬きが増え乾いた唇をぱくぱく金魚のように開け閉めすれば口内のコーヒーがつつと口の端から溢れる。
「れ、礼央くん、1…なんで知ってるの」
「…姉さんに聞かされたんだ、もうはっきり言うよ、姉さんはもっとシたがってる。しかも求められないことを自分に魅力が無いからだって曲解してるよ……まだ若いじゃんか、知ったばっかりのsexは楽しいでしょ、じゃんじゃんシたいのが普通だよ」
「………弟に相談するくらい僕は真梨亜さんの悩みのタネになってるのか」
「違うって、なんでそうなるんだよ…もっとsexすりゃ良いだけの話じゃんか」
「そうなの?」
「僕の話聞いてた⁉︎互いに欲してるんだからやっちゃえよ‼︎馬鹿どもが‼︎」
そもそも二人の押し殺した本音の部分は合致しているのだから身体で話し合えば全て丸く収まるのだ。
それを互いにぐじぐじと疑って不信になって馬鹿馬鹿しい、どうせ真梨亜は初恋相手の大輝のことを離さないだろうし万が一に別れたとしても数年は引き摺るはずだ。
一番簡単で明解な解決法が分かっているのだからやってみれば良いだけの話だ。
「んー…でも、その…デートの度に、っていうのも…僕だって嫌われたくないもん」
「好き合ってるんなら思って当然だよ。愛してるんなら抱きたいじゃん…それを二人で擦り合わせていくんじゃん。『今日はどうする?』って聞いて、合意があればhotel行けば良い」
「んー」
「気まずさの少ない断り方を考えるとか、危険日…その、sexできない日を共有しておくとか…それも醍醐味じゃないの?僕は分かんないけど」
「…礼央くん、ありがとう。なんか気まずいだろうけど教えてくれて助かったよ」
「どういたしまして…僕としても、姉さんには幸せになって欲しいからね……でもhardなSMplayとか嫌がることはやめてよ」
「しない、絶対しないよ!」
両手と首を横に振って慌てる大輝を見て礼央は意地悪そうに笑い、これからの二人の関係が上手く運ぶことを彼なりに祈る。
そして帰宅して真梨亜に「ごめん、姉さんがもっとシたがってるって言っちゃった☆」と舌を出して報告し、クッションでしこたま殴られるという数年ぶりの肉弾戦の姉弟喧嘩が繰り広げられたが…大輝はそんなこと知らない。
つづく
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