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14章
62きゅん
しおりを挟むここ一番の男を見せた大輝は学科ブースが展開する1階から3階を通過して4階へ、誰も居ない廊下を進んで一番隅の教室へと入る。
基本的にパソコンルームでの授業が主体なので、補助的な扱いのこの教室は机などもあまり傷んでおらず予備室のように使われていた。
「……大輝くん?」
二人きりは嬉しいがこんなに引っ張って連れて来られると身の危険を感じる。
空調の音だけがカタカタ鳴る殺風景な部屋に入れられて真梨亜は足が竦む。
「ごめん、真梨亜さん…ふー……少し冷静になった…ごめん、怖かったよね」
「う、うん…急だったから…」
「なんか欲が爆発…暴発しちゃった…はぁ…ダメだな…」
「……(kissは?)」
あれ肩透かし、てっきり大輝からしてくれるものだと思ったのに本人は椅子にどっかり座ってしまって腑抜けのよう、真梨亜を怖がらせた罪悪感で自分を責めていた。
「適切な距離感とか分かんないんだ、経験が無いから…」
「う、うん…(あたしも無いけど)」
「衝動的にこう…カアっとなっちゃった」
「うん……あたしに、kissしたかったのね?」
「そう、だよ…」
「じゃあ…してよぉ…大輝くんから…告白の時みたいに」
あの面接会場でしたファーストキス、そして公園でのキス。
これまで数回キスはしているがほとんど真梨亜からのアプローチで、大輝はだいたい受け身で悟りを開いた仏像のような佇まいになっていた。
時と場合を弁えさえすれば拒んだりしないのだから自信を持ってどんどんして欲しい…真梨亜は大輝の前の長机に丸めた両手を置いて顔の高さを合わせる。
「…良いの?」
「いつでもして、予告されると恥ずかしい」
「確かに…真梨亜さん、近くに来て」
「え、迎えに行くのも恥ずい」
「ハグもキスも慣れてるんでしょ、おいで」
しっかりした太ももを叩き「ここにおいで」と傍に寄せる。
程よくふくよかな尻がちょこんと乗ればその肉厚に大輝は一瞬電源を落としたように頭の中が真っ暗になった。
「…大輝くん?あ、重いかな、やだ、」
「…違う、重くない……心地良い、感じ」
「そう?なら…良かった…」
「ふー……真梨亜さん」
「うん、ん…♡」
フェイスラインに手を当てて顎を引き寄せて、ぷるぷるの唇を奪うと真梨亜は眉尻をぐっと下げて太い首へと腕を回す。
「ん」
「てゃいきくんッ…ん、ん♡」
離れて、くっ付いて、逃げて、追いかけて、観念した大輝と真梨亜の唇が斜めに交わって深く深く喰み合って。
カタンと家鳴りがして真梨亜の肩が跳ねるまで5分ほどはキスは続いていた。
「…ぷは」
「大輝くん…好き、大好き」
「うん、僕も真梨亜さんが好きだよ」
「あの、今夜……date、あの、」
「まだ早くないかな?」
皆までは言わせずに、しかし大輝は先手を打って提案を断ろうとする。
いかんせんまだ勉強が足りないというか真梨亜をリードは出来そうにない。
体を密着させたキスでこれだけ頭がパンクするのだからどんな醜態を披露してしまうか分かったものではない。
しかし真梨亜はすりすりと大輝に寄り添い誘惑とも甘えとも取れる口調で
「かもしれないけど…きゅんきゅんしちゃった、もう…大輝くんのものになりたいの、」
と恥を忍んでおねだりして見せた。
「……」
教室、制服、可愛い彼女を膝にオン、これほどの据え膳を頂かないのは恥云々ではなく彼女に失礼だ。
理由はそれで、いや自分がしたいから、大輝は様々な葛藤と闘い顔を見られぬよう真梨亜を今一度ぎゅうと抱き締めた。
「…1回帰って、普通の服に着替えてからね」
「うん…それなら良いの?」
「女子高生はまた…慣れてからでいいよ」
「…大輝くんのエッチ」
「…何とでも言って」
自分主体で抱きたいが未経験の者が出しゃばるのもどうなのだろう。
いっそ真梨亜に『奪ってもらう』なんてのがスムーズで一番気まずくないやり方なのではないかと大輝は考えたりする。
そして要領が分かり興奮レベルが8分目くらい下がったところで自分が主導権を握り真梨亜を組み伏せるか…しかし初回を任せておいて次回から出張るというのも情けない感じがする。
「(真梨亜さんに聞きながら…レクチャーしてもらうのが良いかな…どうやっても恥ずかしいのに変わりはないし…)」
「どしたの?」
「ううん…場所、考えておいて」
「え、う、うん…検索しとく…(わー、lost virginだ、きゃー‼︎)」
ゆりかごのようにゆらゆらと大輝は真梨亜を乗せて左右に前後に小さく揺れて、時折唇を重ねて頬で体温を感じ合って、時間いっぱいまで柔らかく指を跳ね返す弾力を楽しんだ。
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