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14章
60きゅん
しおりを挟むじりじり照りつける太陽を避けて2階のコンビニへ、食料を買ったら二人は春休みに食事をした食堂棟の横の石段へと下りる。
「真梨亜さん、影に入ってよ」
「良いの?」
「地面が熱いんだ、火傷しちゃうよ。これに、」
真梨亜のミニスカートだと腰掛ければ太ももが地面に直接触れてしまう。
大輝は日陰に彼女を押し込んで腰に差していたフェイスタオルを座布団代わりに敷き座らせた。
「ありがとう…大輝くんは平気?」
「大丈夫だよ」
暑いのだし屋内で食べれば良いのだが人目につき過ぎて落ち着かないのだ。
私服ならまだしもコスプレ女子高生連れでは大輝の趣味も疑われる。
「さっきの大輝くん、カッコ良かった…営業力高い♡」
「そう?受験したい気になった?」
「うん、塾生さんとかに是非お勧めしたい!」
「…そういや、礼央くんは?昨日も来てたけどカメサン志望なのかな」
「どうなんだろ?あんまり考えてないみたいだけどね」
「そう……しかし、姉弟で並ぶと…迫力があったね」
お気に入りの海苔弁を摘んで、大輝はグッドルッキングなラッセルコンビを思い浮かべた。
あれがファンタジーの世界なら彼らは遠距離攻撃を得意とする華やかで気高いエルフか。
彼らの隣に立てば自分などさしづめ盾兼肉弾戦専門の用心棒のゴーレムくらいな見られ方をするだろうことが予想できる。
「目立つよね、でも礼央が居ると緊張せずに入れたから助かっちゃった」
「そっか」
「……どうしたの?」
「んー…聞き飽きただろうけど、礼央くんと並んでる真梨亜さん見ると…」
「complex感じちゃったの?」
「その通り」
大輝だって不思議なのだ。
自分のことを卑下するほどにみっともないと感じたことなど無いし、清潔にしているし善良な人間だと思っている。
なのに真梨亜と仲良くなる毎にその美女と野獣的な落差にモヤモヤしてしまうのだ。
ともすれば真梨亜を従えて自分の価値が上がったように勘違いする痛い男になってはいまいか、考えて外見が変わる訳でもないのにおかしな思考に蝕まれている。
「何を……大輝くん、可愛い」
「可愛くはない」
「ううん、可愛い…よしよししてあげようか」
「要らないよ…」
照れた顔を触る手は夏でも少しひんやりしている。
真梨亜はそんなことでごねる珍しい姿に大輝構いたい欲がもわもわと湧き上がり逞しい肩にとんと頭をもたれた。
「大輝くん、今日はこれ終わったら予定は?」
「夕方に解散したら特に何も」
「じゃああたしとdateしよ♡」
「…うん…あの、着替えてからね」
「え、このままじゃダ」
「ダメ」
食い気味に否定した大輝は頭を起こした真梨亜に「まずい」とばかりに向き直り、
「あの、恥ずかしい…違う、僕が、恥ずかしいんだ」
と膝の上の海苔弁へと目線を逃す。
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