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7章
31きゅん
しおりを挟む「真梨亜さんごめんね、誇ってない部分を褒められるから嫌味かなって思っちゃったんだ」
「なんであたしが大輝くんに嫌味を言わなきゃいけないの?あたしにはcharm pointよ、すっごく魅力的で…カッコいいの……でも不愉快だったなら…ごめんなさい…」
「不愉快とかじゃない、僕は…そうだな、真面目とか優しいとかは指摘されるんだ、セールスポイントってやつだよ、そこを差し置いて劣ってる見た目を褒められるとどうしていいか分かんないんだ」
「劣ってないぃ…」
「僕的には、ね」
ここは話し合ったところで決着はつきそうにない。
彼女の碧い瞳に自分がどう映っているかなんて分からないし素敵に解釈されていたとしても理解ができない。
20年以上連れ添った馴染みのある顔とはいえお世辞にもハンサムなんて思わない、卑屈になる訳ではなく身の程を弁えているだけだ。
「あたし的にはhandsomeよ、今世紀最大のplay boyになれるくらいモテる人だと思ってた」
「……真梨亜さんは変わってるよ」
「そうかな…すっごく好みなんだけどな…」
「モテるどころか、彼女も出来たこと無いよ」
「うそぉっ⁉︎マジ⁉︎え、やだ、ほんと⁉︎」
驚きというか喜びの勝ったその声は車内に大きく響き、真梨亜が一瞬しゅっと立ち上がるもんだから車はぐらと横に揺れた。
「意外かな」
モテないと繰り返すのに交際経験を予測してくれていたのか。
「天然なのかな、それとも人の話を聞いてないのかな」、大輝はネクタイを少し緩めてシートを後ろに傾ける。
「だってこんなにカッコいいのに!」
「それは良いって」
「そっか、そっか……なんか嬉しー…」
「…だから、皮肉に聞こえるんだ」
「ならあたし、大輝くんの初めての彼女になりたい!」
大輝は真梨亜を美人だと思っているしモテるだろうと思っている。
積極的に攻めて来るところからも男慣れしているもんだと思い込んでいた。
なので冴えない自分をチョイスしたのはちょっとした箸休めというか本命と本命の間のインターバルみたいなもので、定期的に話題になる新種の動物的な扱いなのだとタカを括っている。
だから、物珍しさで童貞を食われて甘塩っぱい思い出だけを作るなんて勘弁だと
「…恐れ多いよ」
と顔を手で覆った。
「あたしのこと…嫌い?」
「嫌いだったら…こんなお出かけなんてしないよ…」
「じゃあ好き?」
「好きか嫌いかならね」
「ちゃんと好きって言って欲しー」
「そういう好きじゃないんだよ」
「友達として?」
「うん…」
なぜ自分が断るだなんて分不相応なことをしなきゃいけないのだ。
哀しげに俯く真梨亜の横顔を指の隙間から覗けば大輝の心臓がきゅうっと苦しくなる。
友達として仲良くするなら二人きりの約束なんて取り付けてはいけなかった、女性慣れしてない彼は下手に期待を持たせた3月の自身を呪った。
「あたし、魅力無い?」
ハンドルに額を付けて助手席を見つめる瞳がしっとり潤む。
細い息遣いさえ感じ取れる程に軽自動車というものは物理的距離が近くて隠し事も難しい。
「…真梨亜さんは魅力的だよ、充分ね…でも…なんか短絡的でしょ?こっちがね、好きになってもらったから好きになるって…動機が不純だと思うんだ」
「そうかな…」
「モテない男が偶然得たラッキー、みたいな…僕の実力じゃない、なんて言うんだろ…僕が自力で惚れさせた訳じゃない、みたいな」
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