真梨亜さんは男の趣味が残念だ

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
32 / 92
7章

31きゅん

しおりを挟む

「真梨亜さんごめんね、誇ってない部分を褒められるから嫌味かなって思っちゃったんだ」

「なんであたしが大輝くんに嫌味を言わなきゃいけないの?あたしにはcharm pointチャームポイントよ、すっごく魅力的で…カッコいいの……でも不愉快だったなら…ごめんなさい…」

「不愉快とかじゃない、僕は…そうだな、真面目とか優しいとかは指摘されるんだ、セールスポイントってやつだよ、そこを差し置いて劣ってる見た目を褒められるとどうしていいか分かんないんだ」

「劣ってないぃ…」

「僕的には、ね」

 ここは話し合ったところで決着はつきそうにない。

 彼女のあおい瞳に自分がどう映っているかなんて分からないし素敵に解釈されていたとしても理解ができない。

 20年以上連れ添った馴染みのある顔とはいえお世辞にもハンサムなんて思わない、卑屈になる訳ではなく身の程をわきまえているだけだ。

「あたし的にはhandsomeハンサムよ、今世紀最大のplay boyプレイボーイになれるくらいモテる人だと思ってた」

「……真梨亜さんは変わってるよ」

「そうかな…すっごく好みなんだけどな…」

「モテるどころか、彼女も出来たこと無いよ」

「うそぉっ⁉︎マジ⁉︎え、やだ、ほんと⁉︎」

 驚きというか喜びの勝ったその声は車内に大きく響き、真梨亜が一瞬しゅっと立ち上がるもんだから車はぐらと横に揺れた。

「意外かな」

モテないと繰り返すのに交際経験を予測してくれていたのか。

 「天然なのかな、それとも人の話を聞いてないのかな」、大輝はネクタイを少し緩めてシートを後ろに傾ける。

「だってこんなにカッコいいのに!」

「それは良いって」

「そっか、そっか……なんか嬉しー…」

「…だから、皮肉に聞こえるんだ」

「ならあたし、大輝くんの初めての彼女になりたい!」


 大輝は真梨亜を美人だと思っているしモテるだろうと思っている。

 積極的に攻めて来るところからも男慣れしているもんだと思い込んでいた。

 なので冴えない自分をチョイスしたのはちょっとした箸休めというか本命と本命の間のインターバルみたいなもので、定期的に話題になる新種の動物的な扱いなのだとタカをくくっている。

 だから、物珍しさで童貞を食われて甘塩っぱい思い出だけを作るなんて勘弁だと

「…恐れ多いよ」

と顔を手で覆った。

「あたしのこと…嫌い?」

「嫌いだったら…こんなお出かけなんてしないよ…」

「じゃあ好き?」

「好きか嫌いかならね」

「ちゃんと好きって言って欲しー」

「そういう好きじゃないんだよ」

「友達として?」

「うん…」

 なぜ自分が断るだなんて分不相応なことをしなきゃいけないのだ。

 哀しげにうつむく真梨亜の横顔を指の隙間から覗けば大輝の心臓がきゅうっと苦しくなる。

 友達として仲良くするなら二人きりの約束なんて取り付けてはいけなかった、女性慣れしてない彼は下手に期待を持たせた3月の自身を呪った。

「あたし、魅力無い?」

ハンドルにひたいを付けて助手席を見つめる瞳がしっとり潤む。

 細い息遣いさえ感じ取れる程に軽自動車というものは物理的距離が近くて隠し事も難しい。

「…真梨亜さんは魅力的だよ、充分ね…でも…なんか短絡的でしょ?こっちがね、好きになってもらったから好きになるって…動機が不純だと思うんだ」

「そうかな…」

「モテない男が偶然得たラッキー、みたいな…僕の実力じゃない、なんて言うんだろ…僕が自力で惚れさせた訳じゃない、みたいな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小野寺社長のお気に入り

茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。 悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。 ☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...