53 / 92
12章
52きゅん
しおりを挟む「はい、大輝くん」
「…偶然の出逢いでここまで好きになってもらえて、本当に嬉しく思ってる。僕はカッコ良くもないしデカいだけで何も出来ないけ」
「え、カッコいいって」
「聞いてって……コホン、何も出来ないけど、真梨亜さんみたいなキレイな人に好きになってもらえて自信が付いた。真梨亜さんはいつも僕を過大評価してくれるから居た堪れなくてつい謙遜というか控えめになっちゃうんだけど、真梨亜さんと歩く時は胸を張って…君に見合う男になれたら…真梨亜さんが思う僕になれたらなと思えるようになってる」
共に歩むパートナーとしての責任感、まだまだ若輩だが大輝にもそんな気持ちが芽生えて育ってきている。
一目惚れは一時の気の迷いと本気にしなかったが、今でもこうして一緒に居てくれるなら彼女のお眼鏡は曇っていなかったということだ。
「うん…」
「真梨亜さんは純粋で、ころころ変わる表情が可愛いよ」
「…あわわ」
「緊張で小さくなってたりする時も、反対に慣れて親しみ易くなった時も…そのギャップも面白い」
「おもしろい?」
「うん。ノリが面白くて…いつも楽しそうで、きらきらしてて目が離せない。見た目のことを言うのは良くないかもしれないけど、僕は真梨亜さんのミルクティーみたいな色のこの髪も好きだよ。きょろきょろ動く青い目もキレイで…うん、思えば出逢った時から目が離せなかった」
「うん…」
「よく知らないうちから好いてくれて…もう4ヶ月、これは知り合って告白するには充分な期間が取れたと思う……ラッセル真梨亜さん、」
尻尾を振ってついて来る真梨亜に応える誠意。
いつになく真剣な面持ちでフルネームを呼べば、真梨亜の震える唇は
「ひゃいっ」
と間抜けな声をあげる。
「ぷっ…」
「わ、笑わないで…もう1回呼んで、」
「うん、真梨亜さん」
「はい、大輝くん」
「好きです。僕とお付き合いしてくれませんか」
2ヶ月を経て関係性を育んでの愛の告白に真梨亜はきゅんきゅんと胸を打たれ、答えなど分かっているだろうに疑問系で聞いてくる彼が愛しくて、
「ふぁい…」
と返事をしたらつぅと涎が垂れた。
「あ」
「やっ、やだ、あたしったら」
「ふふ、ごめんね、こんな堅苦しくしちゃって。真梨亜さんはもっとラフなノリが良いのかとも思ってたんだけど…きちんとしたかったから」
「うん…そういう大輝くんが好き…」
「ありがとう……ごはん、食べちゃおうか」
「うん……あ、あの…後で、kiss…していい?」
真梨亜はハンカチでぽんぽんと口元とスーツを拭いて、もじもじと出来たばかりの彼氏へ尋ねる。
できれば彼からして欲しいのだがそうもいくまい。
けれど許可さえ得てしまえば約束は守ってくれるし押しにも弱いのだから提案した者勝ちみたいなところもある。
「後でね」
「…動じない大輝くん…男らしくて好きぃ…」
「あはは、これでも緊張してるんだよ」
そう言った大輝は深く掛け直してくいくいとネクタイを緩めた。
そして残りのメロンパンを食べようとする真梨亜の金色の尻尾を優しく掴み寄せて、ちゅっと軽い軽い口付けをしてさらと放す。
「仲良くしようね」
「うん…」
髪の毛へのキスは愛しさの現れ、大輝はそんなことは知らないし真梨亜を構成するパーツの中で最もハードルが低かったから髪を選んだに過ぎない。
しかし美しいと称賛されたそれへの口付けは直接体に唇を付けられるほどに興奮したし恥ずかしさが噴いた。
「(なんなの、大輝くん、エッチ、なんでそこにkissできちゃうの)」
「さて…とりあえずは就職を決めないとな…内定貰ってから告白するつもりだったから順番が前後しちゃったけど…これも良いモチベーションになるかもね」
「あ、うんうん」
「真梨亜さんと一緒に働けるように、頑張るよ」
「あの、一緒じゃなくても良いの、ちゃんと…dateしたり出来るなら…県外とかでなければ良いの」
「うん、分かった」
もしこの先上手くいかなくなって別れてしまったら?なんてことは考えない。
二人は長くこの関係が続くと信じているし、何より目先の幸福に浸るくらい誰に責められることでもない。
真梨亜がメロンパンを食べ切ってお茶を飲み込んだら、
「よろしくね」
と大輝は彼女の視界を独占した。
つづく
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる