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12章
52きゅん
しおりを挟む「はい、大輝くん」
「…偶然の出逢いでここまで好きになってもらえて、本当に嬉しく思ってる。僕はカッコ良くもないしデカいだけで何も出来ないけ」
「え、カッコいいって」
「聞いてって……コホン、何も出来ないけど、真梨亜さんみたいなキレイな人に好きになってもらえて自信が付いた。真梨亜さんはいつも僕を過大評価してくれるから居た堪れなくてつい謙遜というか控えめになっちゃうんだけど、真梨亜さんと歩く時は胸を張って…君に見合う男になれたら…真梨亜さんが思う僕になれたらなと思えるようになってる」
共に歩むパートナーとしての責任感、まだまだ若輩だが大輝にもそんな気持ちが芽生えて育ってきている。
一目惚れは一時の気の迷いと本気にしなかったが、今でもこうして一緒に居てくれるなら彼女のお眼鏡は曇っていなかったということだ。
「うん…」
「真梨亜さんは純粋で、ころころ変わる表情が可愛いよ」
「…あわわ」
「緊張で小さくなってたりする時も、反対に慣れて親しみ易くなった時も…そのギャップも面白い」
「おもしろい?」
「うん。ノリが面白くて…いつも楽しそうで、きらきらしてて目が離せない。見た目のことを言うのは良くないかもしれないけど、僕は真梨亜さんのミルクティーみたいな色のこの髪も好きだよ。きょろきょろ動く青い目もキレイで…うん、思えば出逢った時から目が離せなかった」
「うん…」
「よく知らないうちから好いてくれて…もう4ヶ月、これは知り合って告白するには充分な期間が取れたと思う……ラッセル真梨亜さん、」
尻尾を振ってついて来る真梨亜に応える誠意。
いつになく真剣な面持ちでフルネームを呼べば、真梨亜の震える唇は
「ひゃいっ」
と間抜けな声をあげる。
「ぷっ…」
「わ、笑わないで…もう1回呼んで、」
「うん、真梨亜さん」
「はい、大輝くん」
「好きです。僕とお付き合いしてくれませんか」
2ヶ月を経て関係性を育んでの愛の告白に真梨亜はきゅんきゅんと胸を打たれ、答えなど分かっているだろうに疑問系で聞いてくる彼が愛しくて、
「ふぁい…」
と返事をしたらつぅと涎が垂れた。
「あ」
「やっ、やだ、あたしったら」
「ふふ、ごめんね、こんな堅苦しくしちゃって。真梨亜さんはもっとラフなノリが良いのかとも思ってたんだけど…きちんとしたかったから」
「うん…そういう大輝くんが好き…」
「ありがとう……ごはん、食べちゃおうか」
「うん……あ、あの…後で、kiss…していい?」
真梨亜はハンカチでぽんぽんと口元とスーツを拭いて、もじもじと出来たばかりの彼氏へ尋ねる。
できれば彼からして欲しいのだがそうもいくまい。
けれど許可さえ得てしまえば約束は守ってくれるし押しにも弱いのだから提案した者勝ちみたいなところもある。
「後でね」
「…動じない大輝くん…男らしくて好きぃ…」
「あはは、これでも緊張してるんだよ」
そう言った大輝は深く掛け直してくいくいとネクタイを緩めた。
そして残りのメロンパンを食べようとする真梨亜の金色の尻尾を優しく掴み寄せて、ちゅっと軽い軽い口付けをしてさらと放す。
「仲良くしようね」
「うん…」
髪の毛へのキスは愛しさの現れ、大輝はそんなことは知らないし真梨亜を構成するパーツの中で最もハードルが低かったから髪を選んだに過ぎない。
しかし美しいと称賛されたそれへの口付けは直接体に唇を付けられるほどに興奮したし恥ずかしさが噴いた。
「(なんなの、大輝くん、エッチ、なんでそこにkissできちゃうの)」
「さて…とりあえずは就職を決めないとな…内定貰ってから告白するつもりだったから順番が前後しちゃったけど…これも良いモチベーションになるかもね」
「あ、うんうん」
「真梨亜さんと一緒に働けるように、頑張るよ」
「あの、一緒じゃなくても良いの、ちゃんと…dateしたり出来るなら…県外とかでなければ良いの」
「うん、分かった」
もしこの先上手くいかなくなって別れてしまったら?なんてことは考えない。
二人は長くこの関係が続くと信じているし、何より目先の幸福に浸るくらい誰に責められることでもない。
真梨亜がメロンパンを食べ切ってお茶を飲み込んだら、
「よろしくね」
と大輝は彼女の視界を独占した。
つづく
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