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3章

13きゅん

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「ありがとう…返すね」

「うん…そういや、なんで学内メールのアドレスをくれたの?てかあのアドレスカード、常備してるの?」

それは大輝が最初に抱いた疑問、学内メールとはいえ連絡先をほいほいと配るなんて失礼だがこうしたコミニュケーションの手練てだれなのかなと思っていたのだ。

 真梨亜はその質問に

「んー…班ごとの発表がある授業だと他の人と連絡取らなきゃいけないじゃない?さっと渡せるようにcardカードは持ち歩いてるの。仲の良い子はchatで良いけど、その授業だけで一緒になる子をわざわざ友達登録するのもなって…だから…あの日、電車が来ちゃって、すぐ渡せるのがあれしか無かったから…い、いきなりchatIDアイディーとか渡しちゃったら変な…怪しいでしょ、だから…」

と答えてサンドイッチの歯形に沿って唇を重ねる。


「連絡先を配り慣れてるのかと思った」

「そんなことないもん…」

「それで…その…メールが来ないからって僕に会いに来た理由は?」

「…あ、会って…話したかったから」

 まるで「今さら?」とでも言いたげな顔で真梨亜は大輝を見つめて、でも

「…なんで」

と意に介してない様子の彼に気付き、手に持つサンドイッチを一気に口へ押し込んだ。

「ムぐ……ん……なんでって…『また会おう』って大輝くん言ったじゃない……きゅんってしたの、ひ、一目惚れみたいな…感じ…やだ恥ずかしい」

「(…ドッキリかな…撮影とかされてない?)」

 大輝は未だに自分が揶揄からかわれている可能性を捨てきれない。

 物陰から「ドッキリでーす」とカメラを構えた若者が出て来るのではないかと危惧し眉だけぴくぴく動かしてポーカーフェイスを維持する。

「(しょんぼりしてるな…)」

 けれど両手を膝に置きうつむく真梨亜が先ほどより小さく見えて、唇を噛み込んで堪える仕草やピンクに染まった頬、そして緩いニットから出ている肩が可憐で…大輝は毒気を抜かれると同時に強張っていた体の力も抜けた。

「ごめん、初対面だったし社交辞令で…挨拶のつもりで言ったんだ」

「そ、う…」

「その…惚れたとかは恐れ多いよ、異性はどんな対応していいか分かんないんだ。…友達として…なら連絡取ったりできるけど」

「友達、それでいい、お友達なら…chatチャットするのも普通だもんね」

「用事があればね」

 用事は無くても作るもの、真梨亜はしめしめと闘志を燃やして残りのサンドイッチにも口を付ける。

 曖昧な関係でなく肩書きをこしらえてやればそれ相当の仲良しができるのだ。

 さて何の用事を作ってやろうかと今から楽しみになる。


「そうだ、真梨亜さん飲み物は?買って来ようか」

「いい、いいよ…大輝くんのお茶、ひと口ちょうだい」

「だめ、口付けてる」

「良いの、ちょうだい」

 直飲みタイプの大輝の水筒はボタンを押せばキュポンと栓が抜けて飲み口が現れて、強奪した真梨亜はなんの躊躇ためらいも無くそこへ吸い付いた。

 グラスと違って間接キスの適合範囲が広過ぎる。

 あごを上げごきゅごきゅと喉仏が上下して、下から見上げる唇のそのエロティックなこと…大輝は例によって簡単に体が反応してしまう。

「ぷは…美味しい…ありがとう」

「ドウイタシマシテ」

受け取った水筒にそのまま蓋をして、大輝は座面へと置く。
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