真梨亜さんは男の趣味が残念だ

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
17 / 92
4章

17きゅん

しおりを挟む

 そこからはなごやかに食事が始まり、真梨亜は最初こそモゴモゴと、しかしだんだんと調子が出て来た。

「カッコいいの、男らしい眉毛でね、がっちりして…今日会いに行ったんだけど…さりげなくlady firstレディーファーストできるの、ごはん奢ってくれてね、日陰にあたしを座らせてくれるの、でも……一目惚れしたって言ったんだけど取り合ってもらえなかった」

「あらら…フラれた?」

「…む、向こうが『またね』って言ったのよ、でも…社交辞令だったみたい…間に受けちゃって恥ずかしい……でも、優しいし、あたしの髪のこと『キレイ』って、褒めてくれて……嬉しかったの」

「その子、singleシングルなの?そんなに男前なら慣れてそうだけど」

「異性は対応が分かんないって言ってたけど…でもescortエスコートsmartスマートだし絶対嘘よ、それか日本人得意の謙遜けんそんよ、だってあんなに素敵なんだもん、モテるはず…うー」

真梨亜は都合良く民族的な線引きをしては自分の意見が正しいのだとプレゼンする。

 家族は「そんなにイケメンならモテるだろうし、けれど主張しない奥ゆかしい男性なのかな」と何となくの大輝のイメージ像を脳内に描いた。

 がっちりとは言えども流行りの細マッチョなのだろう。

 太い眉とは言え自然に整えた正統派日本男児なのだろう。

 膨れ上がる想像図と本物のギャップ、当の本人は誇大妄想されていることなんて知る由もない。


「姉さんがこんなになるなんて珍しいね」

papaパパjealousyジェラシーだナ」

 礼央れおと父は顔を見合わせては急に色気付いた真梨亜の艶っぽさに目を引かれる。

 ラッセル家においては家族を褒め称えるのが慣習ではあるのだが、それにしてもここ最近の真梨亜の輪を掛けた華やかさには肉親とはいえときめいていたのだ。


「その子とはもう会えないの?」

「ううん、友達なら、って…そこから詰めて行くつもり…そ、それでね、来月の会社説明会の帰りに…ごはん、食べに行くことになったの」

「あら、どこ?」

「まだ、決めてないの…友達だから…明るい所がいいよね?」

 おそらくファミレスかファーストフード、あまりかしこまる場所は大輝が遠慮するに違いない。

 本当ならばムーディーなレストランでも、と想像が大きくなる前に

Mariaマリア、夜に男と会うなんてpapaは許さないヨ」

と父の待ったが入った。

「やるじゃん姉さん、hotelホテルに連れ込んじゃえ」

Leoレオ、滅多なことを言うんじゃないヨ!」

「女慣れしてる男ならしめしめってついて来るだろ。ただの堅物なら体で懐柔かいじゅうしちゃいな」

「Leo!」

 やんややんやと騒ぐ男性陣を今度は止めもせずに、母は

「Maria、その食事、うちの店でしたらどう?」

と紅い爪の人差し指を立てて娘へ提案する。

 夫妻の店は駅からは遠いが小洒落たアットホームなレストラン、観光客や地元カップルがデートでも使うお洒落な店だった。

「……緊張しちゃうよ」

「高級Frenchフレンチじゃないわ、ただの洋食屋。説明会帰りならformalフォーマル でしょ?雰囲気出て良いじゃない…ねぇpapa?」

「…まぁ…知らない所で会われるよりは…安心ダケド…」

妻には弱い父はその提案を飲み、二人のためにひと席予約することを了承する。

「あたし…見栄張らずに素のままの方が良いのかな…釣り合うかなぁ」

「そんな高嶺の花なの…じゃあ逃すのが惜しいと思わせるくらい強気に行くのも手かもしれないわね」

「でしょ?mamaママ…あたし、頑張る」

「ええ、応援してるわ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

処理中です...