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1章
5きゅん
しおりを挟む「mail、来たぁ…」
大輝と別れた後1駅分だけ乗ってホームへ降りた真梨亜は、スマートフォンのインターネットブラウザで新着メールを確認して嬉しさを噛み締めていた。
高鳴る鼓動は大きな胸の奥でドキドキと脈打って呼吸も苦しくて、今しがた触れたばかりの大輝の胸板と頬の感触に…正直興奮している。
「(初めて…papa以外の男の人にhugしちゃった、kissもしちゃった)」
彼女が伝統としての日本民族ではないこと、そして彼女の両親が海外からの移住民であることは確かなのだが、実は真梨亜は両親の母国の慣習にはそれほど染まってはいなかった。
挨拶としてのキスハグは家族間ではするけれどそれ以外の人にしてはいけないと…娘を愛する父はそのように教育を施していたのだ。
日本人は言葉とジェスチャーくらいしか挨拶では使わない、出会い頭ではペコリと会釈で済ませるなんてこともザラ、過剰にスキンシップを図れば日本に馴染みにくいだろうとの親心でもあった。
なので真梨亜も海外出身の友人に会ったからといってキスハグなんてしないし、発音は仕方ないが無闇に英語を話したりもしない。
ならば何故真梨亜が大輝へ別れのキスハグをしたかと言えば…それらは衝動に任せた求愛に近しい行動、つまりは愛情表現としての抱擁・接吻だった。
「(きゅん…カッコ良かった…体大きいし男らしくて素敵…助けてくれたしこれって運命なんじゃない⁉︎また会いたい…)」
偶然出逢った二人だが真梨亜は助けてくれた大輝の顔と体つきが大層好みだった。
その因果はどちらが先かなんて分からないけれどこの場合彼の容貌についてはあまり関係無いのかもしれない。
困っていたところを救ってくれた、さらにビジュアルも好みでラッキー、くらいのことであろう。
しかして真梨亜は大輝の優しい性格に確実に惹かれて、顔見知り以上への発展を試みる。
『一緒に頑張ろうね!また近くで合同説明会あるときは声掛けてね!絶対だよ‼︎』
「(…重い?)」
物腰の柔らかい大輝にはグイグイ攻めるくらいの強引さが必要か。
もうキスハグもしてしまったことだし、真梨亜は強気な女性を演じることに決めた。
押せ押せで行けばコロリと落ちるだろう。
それでも無理なら色仕掛けでも良い…これはきっと運命なのだ。
彼氏居ない歴21年の真梨亜は短絡的に大輝をロックオンする。
つづく
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