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8章
37きゅん
しおりを挟む「にしても…Mr.イマイズミ、Mariaを助けてくれたんですって?ありがとうね」
コンシャはずいずいと大輝へ寄り添い何故か隣へと腰を下ろした。
「え、あ、どういたしまして…」
「私服ならなんてことないんだけど、制服とか背広の中に入るとやっぱ目立つのよ。加えて私似のこの美貌でしょ?みんなの注目の的よねぇ」
「そうですね…」
なるほどグイグイの見本を示しているつもりかコンシャは大輝にぴっとり胴も尻も脚も付けて上目遣いで顔を覗き込む。
大輝は深い青碧の瞳に取り込まれそうに感じて手で自身の視界を覆う。
にしても日本語が流暢だな、長く住んでいるティツィアーノよりもこのコンシャの方がイントネーションも発音も日本語母語話者のそれに近くて大輝は驚いた。
「mama、そんなにくっ付かないで」
「なぁに、Maria…あら、あなたpierceは赤にしたの?」
「うん、papaが買ってくれたやつ」
「ふぅん…それも素敵だけど今夜はboyfriendに合わせた方が良かったんじゃない?ほらtieの青、選ぶならそれでしょ」
「……」
真梨亜は雷に打たれたようなショックを顔に表して、紅い唇をあんぐりと開け固まる。
確かに今日の大輝のネクタイは青、帯同するならペアになる色味をさりげなく盛り込めと…コンシャは本人の前でコーディネートの粗を指摘した。
「それにその野暮ったいdress…もっとお洒落なのがあったでしょう?私があげたやつ、Misterが恥かくわよ?」
「mamaのは全部派手なんだもん。それに胸が開いてると大輝くんがこっち見てくれないと思ったから」
「真梨亜さん気にしないで。あの、お母さん、元々がデートとかそういうものではなかったので…」
「優しいのねぇ、Mister♡」
何の意地悪スイッチが入ったのかコンシャは大輝の顎に指を這わせて、しょりしょりと少し伸びた髭の感触を楽しみ始めた。
「あの」
「…mama、あたしの大輝くんに触らないで」
「良いじゃない、もうMariaのモノになったの?ねぇMister?」
「あの」
「大輝くん、離れて」
「この髭、男らしいのね、私すっごい好き…」
「あの」
離れようにも壁際だし逃げ道は無し、指が唇にかかり頬にまで到達した時、
「やいイマイズミ!俺のhoneyに何シテル!」
とティツィアーノが熱々のプレートを席へと運んで大きく叫んだ。
どう見たってちょっかいを出してるのは妻の方なのにこの言い草、大輝は動じないコンシャの手首を「失礼」と握ってようやく離れさせる。
「すみません」
「イマイズミ、デレデレしてんじゃないヨ、人の妻に手出すのは鞭打ち百回に市中引き回しの刑ヨ!」
「刑が古いなぁ」
「今度俺のwifeに触れてミロ、その太い眉毛剃り落としてショーナンの海に投げ込んでやるカラナ!」
「あ、はい」
大輝は湘南の海面にぷかぷか浮かぶ自身の眉毛を想像しては可笑しくなって笑いを堪えた。
対面を確認すれば真梨亜もつい吹き出していて、ティツィアーノはさらに
「ナニ笑ってんダヨ!」
と激昂するもそこまで本気には見えなかった。
周囲も常連は慣れているのか「またか」といった表情で、初めての客だけがそわそわと不安そうにこちらを窺っている。
「あー可笑しい…ふふ♡Mister、Mariaと仲良くしてあげてね…あなた、厨房に戻りましょ」
騒ぎの根源のコンシャはもう一度大輝の顎を撫でてからティツィアーノの背中を押し席を離れ、他の客にも「ここはこういう店よ」と平常をアピールしながら会計作業へと入った。
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