真梨亜さんは男の趣味が残念だ

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
23 / 92
5章

22きゅん

しおりを挟む

 会場へ戻って別行動を取りまた合流して、途中大学の友人に遭遇したりしては閉会時刻までしっかりと見て回る。

 そして資料の詰まった重たい手提げ袋を持って駅まで歩き、さてディナータイムまでどうしようかと構内で話し合うことにした。


「荷物が結構あるね」

「うん…どうしよ、一旦家に帰ろうか」

「それでも良いよ、2時間くらいあるから…僕はその辺で時間潰すからまたここで集合しよう」

 真梨亜はここからひと駅だが大輝はもっとかかるし自宅まで自転車を使わねばならないのだ。

 喫茶店でも入って資料を読み直そうかと思ったのだが彼女は良い顔をしない。

 どうせだから体型に合ったワンピースにでも着替えようかと思っていたけれど大輝が帰らないなら少しでも一緒に居たい。

「え、じゃああたしも居る、」

と駄々っ子のように上目遣いで彼を見上げた。

「そう?でも重そうだし……あ、」

「なに?」

「いや……真梨亜さん、ここ、ソース付いてる」

 大輝が指す先の真梨亜のジャケットにはよく見れば茶色い点のシミ、胸の位置に昼のバーガーのソースが付着して、もう乾いて擦っても取れない。

 気を付けたつもりだったが足りなかったか、ちょうど左のバストトップにちょんと垂れたようだ。

「え?……うわぁ、やだっ、照り焼き⁉︎」

「ぽいね…お手洗い行って来る?」

「…いい…帰って着替える…はぁ…」

「大丈夫?…なんか不安だから付き合うよ」

 しかし昼から別行動が多かったから気が付かなかったな、向かい合っても胸は視界に入れないようにしていたから尚更で…そういえばすれ違う男性が彼女の胸を注視していた気もするか、大輝は全く騎士ナイトになれていない自分に呆れてしまう。

 まだ時刻は15時30分。

 真梨亜によると最寄駅は隣なのだが時間を潰せる場所があまり無いためにこの甕倉カメクラ駅を支点にしたらしく、結局隣駅に行くことになるのでその方が都合が良いそうだ。


「ありがと…じゃあこっち」

「うん…それ持つよ、貸して」

「ありがとう…大輝くん、優しいのね」

 大輝が真梨亜の分の手提げも一緒に持つとそのたくましさに彼女は簡単にきゅんと胸を打たれる。

 それが無自覚でも情報収集した上でのあざとい計算でもどちらでも良い、今この時の大輝は彼女にとっての王子様だった。

「心掛けてはいるつもりだよ…僕の柔道の先生がそういう教えでね、『人に優しくしなさい』って…わざとらしくはしてないつもりだけど…鼻についたらごめんね」

「そんなことないよ…柔道してたんだ」

「うん、今も。道場の手伝いにたまに行ってる」

「すごい、だから体もこんなに大きいの?」

生まれ持ったものをさらに強くした肉体、筋肉質なタイプが好みの真梨亜はスーツの下に贅肉ぜいにくではなく予想通り引き締まった体躯があると見てわくわくする。

 教えと言うほどではないが真梨亜も父から『イザという時に盾になってくれる男じゃナイと結婚はオロカ交際もさせないヨ』との言葉を貰っており、彼女はそれを文字通りの意味に解釈して理想形としていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小野寺社長のお気に入り

茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。 悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。 ☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...