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5章
22きゅん
しおりを挟む会場へ戻って別行動を取りまた合流して、途中大学の友人に遭遇したりしては閉会時刻までしっかりと見て回る。
そして資料の詰まった重たい手提げ袋を持って駅まで歩き、さてディナータイムまでどうしようかと構内で話し合うことにした。
「荷物が結構あるね」
「うん…どうしよ、一旦家に帰ろうか」
「それでも良いよ、2時間くらいあるから…僕はその辺で時間潰すからまたここで集合しよう」
真梨亜はここからひと駅だが大輝はもっとかかるし自宅まで自転車を使わねばならないのだ。
喫茶店でも入って資料を読み直そうかと思ったのだが彼女は良い顔をしない。
どうせだから体型に合ったワンピースにでも着替えようかと思っていたけれど大輝が帰らないなら少しでも一緒に居たい。
「え、じゃああたしも居る、」
と駄々っ子のように上目遣いで彼を見上げた。
「そう?でも重そうだし……あ、」
「なに?」
「いや……真梨亜さん、ここ、ソース付いてる」
大輝が指す先の真梨亜のジャケットにはよく見れば茶色い点のシミ、胸の位置に昼のバーガーのソースが付着して、もう乾いて擦っても取れない。
気を付けたつもりだったが足りなかったか、ちょうど左のバストトップにちょんと垂れたようだ。
「え?……うわぁ、やだっ、照り焼き⁉︎」
「ぽいね…お手洗い行って来る?」
「…いい…帰って着替える…はぁ…」
「大丈夫?…なんか不安だから付き合うよ」
しかし昼から別行動が多かったから気が付かなかったな、向かい合っても胸は視界に入れないようにしていたから尚更で…そういえばすれ違う男性が彼女の胸を注視していた気もするか、大輝は全く騎士になれていない自分に呆れてしまう。
まだ時刻は15時30分。
真梨亜によると最寄駅は隣なのだが時間を潰せる場所があまり無いためにこの甕倉駅を支点にしたらしく、結局隣駅に行くことになるのでその方が都合が良いそうだ。
「ありがと…じゃあこっち」
「うん…それ持つよ、貸して」
「ありがとう…大輝くん、優しいのね」
大輝が真梨亜の分の手提げも一緒に持つとその逞しさに彼女は簡単にきゅんと胸を打たれる。
それが無自覚でも情報収集した上でのあざとい計算でもどちらでも良い、今この時の大輝は彼女にとっての王子様だった。
「心掛けてはいるつもりだよ…僕の柔道の先生がそういう教えでね、『人に優しくしなさい』って…わざとらしくはしてないつもりだけど…鼻についたらごめんね」
「そんなことないよ…柔道してたんだ」
「うん、今も。道場の手伝いにたまに行ってる」
「すごい、だから体もこんなに大きいの?」
生まれ持ったものをさらに強くした肉体、筋肉質なタイプが好みの真梨亜はスーツの下に贅肉ではなく予想通り引き締まった体躯があると見てわくわくする。
教えと言うほどではないが真梨亜も父から『イザという時に盾になってくれる男じゃナイと結婚はオロカ交際もさせないヨ』との言葉を貰っており、彼女はそれを文字通りの意味に解釈して理想形としていた。
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