上 下
2 / 93
1章

2きゅん*

しおりを挟む

「あのー、ごめんなさい。お節介しちゃって…だ、大丈夫かな?何か飲む?」

「いえ…あの…ありがとうございました」

「わ」

顔を上げた彼女は不織布のマスクをしていたが、その上のまるで宝石のような碧眼へきがんに視線を掴まれて…つい見惚れてしまう。

「あの…?」

「…あ、ごめん…な、泣いてるのかと思って…体調悪い?マスクだしその…」

「ううん、隠してるだけ」

そう言って彼女はマスクを外す。

 目元からもなんとなく彫りの深さは分かっていたが、顔全体を見ればやはり一般的な日本人のそれとはかけ離れた西洋人の顔が現れた。

 しかし肌の色は白人と言うよりもう少しエスニックな印象も受ける。

 つまりは日本人とそう変わらない、むしろもう少し焼けて健康的な小麦色をしていた。

「…に、日本語…」

「大丈夫。日本育ちだから」

「そっか、そう…」

「目立つ顔立ちだから隠してたの。学校ではここまでしないんだけど…suitsスーツの中に居ると…ね」

「キレイだもんね」

 大輝はなんとなく『スーツの黒』と『瞳の青緑』そして『髪のミルクティー色』の対比かと思いそのように返した。

 だが、単純に容姿を褒められたのだと感じた彼女はぽっと頬を染めて目線を切ってしまう。


「…助けてくれてありがとう…お礼する、好きなの選んで」

小さながま口から小銭を自動販売機へ投入して、彼女は急かすように美しい目で大輝を見つめた。



「いいの?ごめんね…コーヒーいただきます」

「なんでそんなに謝るの?悪いことしてないじゃない」

「いや…なんでだろうね、でしゃばったことしちゃったかなーみたいな感じでさ」

「…出る杭は打たれるって?人助けしたんだから胸張って」

妙に実感のこもった雰囲気でそう言い、彼女は小銭を追加してペットボトルのカフェオレのボタンを押す。

 落ちてきたボトルをしゃがんで拾う、そのしなやかな動きを目で追う大輝は彼女のスカートのスリットに気付いて慌てて目を逸らした。

「熱…そっちで飲も」

「う、うん」


 空いたベンチに並んで腰掛けペットボトルを開け、ひと口飲んで「ふぅ」と息をついた彼女はポケットからパスケースを取り出して学生証を掲げる。

「あたし、カメジョ…甕倉カメクラ女子大の真梨亜。Russellラッセル・真梨亜ね。Russellは苗字」

「カッコいいね……僕は今泉いまいずみ大輝、甕倉産業大学」

「うん…大輝くん。あの…ありがとうね、さっきの…助けてくれて…嬉しかった」

「…何かしたの?」

 話してみれば失礼な感じなどしない。

 お礼を貰ったので大輝は真梨亜の肩を持ってしまう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜アソコ編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとエッチなショートショートつめあわせ♡

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...