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1章
2きゅん
しおりを挟む「あのー、ごめんなさい。お節介しちゃって…だ、大丈夫かな?何か飲む?」
「いえ…あの…ありがとうございました」
「わ」
顔を上げた彼女は不織布のマスクをしていたが、その上のまるで宝石のような碧眼に視線を掴まれて…つい見惚れてしまう。
「あの…?」
「…あ、ごめん…な、泣いてるのかと思って…体調悪い?マスクだしその…」
「ううん、隠してるだけ」
そう言って彼女はマスクを外す。
目元からもなんとなく彫りの深さは分かっていたが、顔全体を見ればやはり一般的な日本人のそれとはかけ離れた西洋人の顔が現れた。
しかし肌の色は白人と言うよりもう少しエスニックな印象も受ける。
つまりは日本人とそう変わらない、むしろもう少し焼けて健康的な小麦色をしていた。
「…に、日本語…」
「大丈夫。日本育ちだから」
「そっか、そう…」
「目立つ顔立ちだから隠してたの。学校ではここまでしないんだけど…suitsの中に居ると…ね」
「キレイだもんね」
大輝はなんとなく『スーツの黒』と『瞳の青緑』そして『髪のミルクティー色』の対比かと思いそのように返した。
だが、単純に容姿を褒められたのだと感じた彼女はぽっと頬を染めて目線を切ってしまう。
「…助けてくれてありがとう…お礼する、好きなの選んで」
小さながま口から小銭を自動販売機へ投入して、彼女は急かすように美しい目で大輝を見つめた。
「いいの?ごめんね…コーヒーいただきます」
「なんでそんなに謝るの?悪いことしてないじゃない」
「いや…なんでだろうね、でしゃばったことしちゃったかなーみたいな感じでさ」
「…出る杭は打たれるって?人助けしたんだから胸張って」
妙に実感のこもった雰囲気でそう言い、彼女は小銭を追加してペットボトルのカフェオレのボタンを押す。
落ちてきたボトルをしゃがんで拾う、そのしなやかな動きを目で追う大輝は彼女のスカートのスリットに気付いて慌てて目を逸らした。
「熱…そっちで飲も」
「う、うん」
空いたベンチに並んで腰掛けペットボトルを開け、ひと口飲んで「ふぅ」と息をついた彼女はポケットからパスケースを取り出して学生証を掲げる。
「あたし、カメジョ…甕倉女子大の真梨亜。Russell・真梨亜ね。Russellは苗字」
「カッコいいね……僕は今泉大輝、甕倉産業大学」
「うん…大輝くん。あの…ありがとうね、さっきの…助けてくれて…嬉しかった」
「…何かしたの?」
話してみれば失礼な感じなどしない。
お礼を貰ったので大輝は真梨亜の肩を持ってしまう。
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